Long Way

□図書室ではお静かに
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顔が近づく
吐息がかかる


唇が触れ合う手前で、星夜は柳の額を抑えて止めていた。



「ま、まてまて、なんで、そう、そういうこと、すぐ…」



心の準備がなにもできていない
頭の処理も追い付いていない

あたふたとする星夜を前に柳はやはり落ち着いていた。



「あぁ、すまない、きちんと確かめていなかったな」

「…はい?」

「聞かせてくれるか、お前の気持ちを」



しれっとそう言って、自分の額から星夜の手をとると、柳はそれをぎゅっと握ってくる。
至近距離のまま見つめられ、手まで握られて星夜はしどろもどろになった。



「な、っ、だって、お前っ、わかって…」

「さて?」

「〜〜っの」



確信犯だ
彼はわかってやっている


この野郎と言いたいのに、心拍数は上昇するばかりで強く言えない。
弱々しい声しか出なかった。



「…わ、わかってたからしようとしたくせに」

「止めたのはお前だろう、俺はしかと伝えたが」



なんてやつだ
逃げようにも後ろは本棚ですぐ前には柳で、手まで握られているから逃げられない。



「逃がしはしない。ほら」



ちゃんと言え
と口角をあげて見つめてくる柳に、星夜は呻き声をあげるしかなかった。


なんつうドSだと思うのに、そんな彼の表情にまた心拍数が上昇してしまう。
厄介なのに惚れてしまったと己の感情を悔やんだ。


しばらくの間沈黙して、目線を泳がせて、それでも注がれる柳の視線はやまなくて星夜は覚悟を決める。



「や、柳、さん」

「ん?」

「………………………………………す、すき」




言うやいなや
星夜はぱふん、と柳の胸に顔を埋めた。


手っ取り早く彼から顔を隠すにはこれしかない。
自分がこんなにヘタレになるなんて、と星夜は精神が参るばかりだった。








柳が視線を落とせば彼女の耳は真っ赤だった。


あまりにも可愛らしい彼女の反応に、柳は理性が吹っ飛びそうになるのを必死で堪える。



「(落ち着け柳蓮二、ここは図書室だ、ここは図書室、ここは学校、落ち着くんだ)」



手で額と目頭を抑える柳の姿は、星夜から見られることはない
何故ならば彼女も恥ずかしさで悶絶中だからである。



ふう、と息をはいて改めて見下ろせば、星夜は未だに自分の胸に顔を埋めたままだ。


にしても真っ赤だな


と赤くなったままの彼女の耳に手を触れたとき



「ひゃっ!」



星夜がビクリと反応して、柳の胸から離れた。

自分自身でも声が出て驚いたらしい。
何が起きたんだと目を白黒させながら、混乱した様子でこちらを見てくる。



いまのは、耳を触ったからか…?


目の前の彼女の耳に再び手を伸ばし、さわさわと触ってやれば、星夜は再びビクリとして耐えるように身をすくめる。



「っや、柳、や、やめて」



顔を赤らめた彼女と目があったとき
柳の中で、 パァンと何かが吹っ飛ぶ音がした。



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