Long Way
□焼肉三昧!
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焼肉食べ放題。
それは、日々エネルギーを必要としている中学生たちにとって最高にうれしいもの。
「焼肉焼肉おにくにくー!!!」
とある休日のこと
氷帝テニス部が試合終わりに、テスト終了のねぎらいも兼ねてみんなで焼肉に行くらしい。
どうせついてくるんだろ、と跡部が誘ってくれたので、優姫はもろ手を上げて喜んだ。
「うおっ!?優姫!?」
「あなたどこにでも付いてきますね」
「すまねぇ、ほんと」
氷帝陣と現地で合流した優姫と星夜。
日吉の言葉に、立海でぽつーーんな星夜が申し訳なさそうにしていると、あなたにいったわけではありませんが、と日吉のぶっきらぼうなフォローが入った。
さっきの言葉は優姫にむけられてのものだったらしい。
「だって焼肉食べたいもーーーん!」
当人はこれっぽっちも気にしていないが。
「俺は華があって嬉しいで。男だけで焼き肉はむさ苦しいからなぁ」
「それはそうかもしれないですね」
はしゃぐ優姫の横で忍足と鳳がほほえましく見守っている。
しかし、はしゃいでいるのは優姫だけではなかった。
「ラム肉!ラム肉たべる!」
「早く食いてえ!」
芥川と向日もまたウキウキしている。
跡部の声がかかって全員で移動し、焼肉店に入ると奥の間に通される。
そこは広いお座敷で、団体で入るには十分の広さだった。
「うわっ、すごい座敷」
「ひぇー」
聞くところによると、今回の食事代はすべて跡部のおごりらしい。
さすが金持ち太っ腹である。
「お前ら、各自好きに頼みな」
跡部の開始を促す一言に、イエーーーイ!と歓声が上がる。
食べ放題なので、各自が好きなメニューを選び、各々で注文し始めた。
頼み終わると、優姫が唐突にすっくと立ち上がった。
「料理くる前にトイレいってくる!」
「「一人で行けんのか!?」」
瞬間、星夜と宍戸が見事にハモり、お互いに顔を見合わせる。
星夜が察したような顔になった。
「宍戸…なんか、ごめんな」
「いや、あんたも苦労してたんだな」
「いや、俺は慣れたからいいけど…なんかほんと、ごめんな」
「いや、いいって、俺ももう慣れたっつーか」
いやいやいや…と繰り返し、謎の保護者会が開かれている。
優姫は不満顔だ。
「なんだよ!行けるったら!さっき来るときちゃんと見たもん!」
「っていっていっつも迷うじゃねえか」
「そうなんだよな」
宍戸の言葉にウンウンと星夜がうなずいている。
そしてそのまま、途中までついていくから、と腰を上げようとした星夜だったが。
「うるさい行けるもん!」
「あ、待て優姫」
星夜の制止も聞かず、優姫は座敷を飛び出していった。
あーぁ、と星夜が呆れた声を出して腰を落ち着ける。
「戻ってこれるかな」
「さあな」
保護者二人が同時に息を吐いた。