Long Way

□夏だ!海だ!トレーニングだ!(第二章)
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一日目の練習が終了した。


少なからず、疲労の色を見せたテニス部員たちが一斉に合宿所へと戻ってくる。


例外なく、宍戸と鳳の二人も風呂の準備をすべく部屋に向かおうとしていると、向こうからフラフラと一人の見慣れない人物が歩いてきた。


二人が?顔で見ていると、その人物はこちらを見てぱっと笑顔になる。




「お!亮ちゃん!チョタ!もう帰ってきたんだ!」

「……優姫?」

「うん?」



声をたよりに宍戸が聞くと正解だったようだ。
優姫は前髪をおろしていて普段とは全く雰囲気が違っており、比較的一緒にいる頻度の高い宍戸でも瞬時にはわからなかった。



「誰かと思ったぜ」

「へ?ご覧の通り優姫だよ!」

「普段は前髪を下ろされてないので雰囲気が違ってて、俺もわかりませんでしたよ」

「え〜そうなんだー」




本人は雰囲気が一変する自覚がないらしい。
鳳が、なぜおろしているのかを問うと、優姫は少し困ったような顔になった。



「あー…なんかさーゴムどっか行っちゃって。どっかに落としたかなーと思ってたんだけど」




どうやら自分のヘアゴムを探している最中のようだ。
するとそこで宍戸と鳳の後ろから新たに2人分の足音がやってくる。




「宍戸に鳳、こんなところでなにしてるんだい?」




幸村と丸井だった。
この二人も同様に、これから部屋に戻って風呂支度をしますといった風体をしている。

先に優姫の存在に気づいた幸村が、数秒間のシンキングタイムに入った



「えっと、背丈的に優姫ちゃん?」

「いぇす!ゆっきーにブンちゃんおつかれ!」

「へぇー前髪下ろすと雰囲気変わるな」

「普段が逆に子供っぽすぎるんだろ」

「亮ちゃんなんでそういうこと言うのよ!」



最近の亮ちゃん優姫の扱い雑すぎるよ!と優姫がぷんすかしているが、宍戸が無視を決め込むので、幸村は遠慮なく彼女に話しかけた。




「前髪は普段はおろさないのかい?」

「うーーん、前髪って伸びちゃうしセットめんどくさいし、それなら適当にのばして結んであげといたほうが楽かなーと」

「そういうことなんですね」

「で、なんでここにいんの?」

「ヘアゴムなくして探してたらここにいた」

「ここにいたって…」




これもしかしなくても、また迷ってるんじゃ
という一同の懸念は当たっている。

おそらく優姫は今自分がどこにいるのかわかっていない。

その根拠はというと、優姫たちの部屋から風呂までいくのにこの場所は通らないはずだからだ。




「双烹はどうしたんだよ」

「まだ髪かわかしてる」

「あー…もう色々わかった。とりあえずここにいろ」



宍戸が呆れて息を吐いたちょうどその時、優姫が歩いてきた方向から、星夜の声が聞こえてきた。



「優姫〜どこいった〜」

「あっ、星夜だ、あっちのほうに」

「お前はじっとしてろ。双烹ーこっちだ」

「!そっちいく」



宍戸の声に気づいた星夜の足音がこちらに近づいてきた。
現れた星夜はいつも通りの髪型だった。




「さんきゅー宍戸、だいぶ助かったよ」

「あぁ」

「ヘアゴム浴槽のなかに落ちてたぞ」

「えっ、探したのになぁー」



優姫がヘアゴムを受け取って、よいしょっという声と共にぴよんという触角を作り出す。


いつもの優姫の出来上がりだった。



このあと、テニス部員たちが風呂に入っている間に、優姫たちは食事の準備をするらしい。



「じゃあまたあとでねみんな!」



優姫がブンブンと手を振って星夜と共に去ってゆく。
それを見送った4人は、それぞれで会話を再開させた。



「おろしていればなんとか年相応なのにね」

「幸村くん割とひどいこといってるぜ」

「そうかな?」



立海の二人が他愛のない会話をしつつも部屋に戻っていく。
そして氷帝の二人はというと



「……」

「長太郎、どうした?」

「えっ?あっ、いいえ!なんでもないです!」



ぼーっとしていた鳳に宍戸が声をかけると、鳳がここで始めて我に返ったようなそぶりを見せる。

行きましょうか!と鳳がなんでもないように振る舞ったので、宍戸はあえて何も言わずに彼と共に部屋の方へと歩き出した。



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