Long Way
□番外編のお姫さま
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(always自由時間から一週間後くらいの出来事)
それは昼休み中の出来事だった。
『羽織優姫さん 職員室まで来てください』
「!?」
優姫が彩夏、柚菜、晴の三人と他愛のない話をしながらお弁当を食べていると、何と校内放送で呼ばれてしまった。
「優姫、なんかやらかした?」
「ええっ、全然心当たりないよ!?」
晴に言われて記憶をたどるも、自分は何もやらかした覚えがない。
とりあえず、呼び出されたのだから行かねば、と優姫は立ち上がろうとしたが
「待って、職員室ってどこ!?」
職員室の場所がわからないことに気づいてハッとする。
どうしよう、と三人の顔を見れば三人ともが揃って呆れ顔をしていた。
いや、だって
職員室、転校初日にしか行ってないし
「あ、彩夏姉ちゃん〜職員室まで連れていって〜〜」
「いや、職員室なんてこの教室でてすぐ右にある階段一番下まで降りて左行って突き当りを右に行ってしばらく歩いたらすぐだよ?」
「あー!わかんないわかんない!もう階段降りてからその先が分かんない!」
「少しは聞く姿勢を持ちなさいよ」
結局、優姫は彩夏に職員室まで同行してもらうことになった。
…………
職員室までやってくると、放送で自分を呼び出した先生が女子生徒と話していた。
その先生は、優姫の記憶が正しければ体育を教えていた先生で、彼がこちらに気づいて片手を挙げると、彼と話していた女子生徒もこちらを振り向いた。
「おお、来たな羽織」
「参上いたしました!」
「待ってました!!」
「うぉお!?」
するとまさかの、振り向いた女子生徒のほうががしりと優姫の手を握ってきた。
驚いていると、彼女は興奮した様子で話し始める。
「羽織さん!是非!わが陸上部に!!」
「ほ!?」
目の前の生徒は陸上部らしい。
輝いた瞳でじっと見つめてくるその様子に気圧されていると、先生が笑いながら状況を説明してくれた。
「俺は女子と男子の陸上部顧問でな、その子は女子陸上部主将だ。今回呼んだのはこいつがお前をスカウトしたいっていうからでな」
「おあーなるほどですね」
「是非!!是非わが陸上部に!」
「おぅうんすごい勢い」
氷帝の生徒はみなシャレオツで澄ましているのかと思っていたが、それは偏見だったらしい。
彼女は間違いなく熱いハートの持ち主だ。
まぁまぁといってとりあえず手を離してもらい、その主将にこうなった経緯を聞いてみると
先日の体育の授業で、優姫がすこぶるいいタイムを叩き出したことにより、俊足の転校生が来たと瞬く間に優姫の噂が広まった。
それを耳にした彼女――陸上部主将が顧問である体育担当教師に優姫に会わせてくれとせがんだ結果が今日につながっている。
「お前まだ部活入ってないだろ、どうだ、陸上部」
「陸上部かぁー」
先生に言われて考えてみる。
彩夏を見ると
いいんじゃない?と面白そうな顔をしていた
部活に入ったら、テニス部の面々と一緒にいれる時間が減ってしまうのではと思いながらも、走ることへの魅力に惹きつけられる。
テニプリ界の陸上部というのはどんなレベルなのか
どんな選手がいるのか
優姫はワクワクが抑えきれなくなって、笑顔で陸上部主将を見つめ返した。
「うむ。即決はできないけども、前向きに考えます!」
「本当ですか!?二か月後の県大会とかも出てくれたりしますか!」
「二か月後!?」
やばい、予想以上に期待されている。
主将曰く、なんでも短距離選手が不足しているらしい。
とりあえず、結論を出すまで一週間ほど待ってもらうことになった。
そして二か月後
優姫は本当に、氷帝学園陸上部100m走代表として陸上の関東大会に出ることになるのだがそれはまた、別の話