Long Way

□初登校
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「うぉおおおーすげぇええー高級車!」


朝。
玄関から出て早々、優姫が車に走りよる。

楽しそうにピョコピョコと車の周りを回り目を輝かせる優姫。
THE庶民である。



「…お前、はしゃぎすぎだろ」

「だって星夜!羽織さんたち今からこれに乗るんでありますよ!?」

「いや、まぁ、楽しみだけどさあ」

「すげぇえええマジすげぇえええ!」

「おい、お前ら、おいてくぞ」



―――昨日

扉が開いた瞬間、優姫と星夜はそちらに釘付けになった。

そう、入ってきたのは


「跡部、あれ誰?」

「跡部…ついに自宅に女連れ込むようになったんか」

「あーん?何馬鹿なこといってんだお前」



氷帝学園、テニス部レギュラー
忍足侑士、向日岳人



「す、すげぇ…本物だよ星夜ッ」

「まさか初日でお目にかかれるとは…!」



声をひそめて優姫が星夜に話しかければ、彼女の方も興奮をおさえられない様子で声を上ずらせる。


二人がそのままじーーっと彼らを見ていると、忍足のほうが先にそれに気づき、こちらに歩み寄ってきた。



「嬢ちゃんら、跡部に連れ込まれたん?」



なんという第一声だ。



「……お前頭大丈夫?」

「あっはっは!ちょっと助けてもらっただけだよー何言ってんのたっはっはっは!」



顔を引きつらせる星夜と笑い転げる優姫。
こうも対照的な反応だと逆に新鮮である。

おもろいコンビやなぁ、なんて忍足が思っていると、優姫がブンッと彼の方に手を指しだした。



「羽織優姫ですっ、中三ですっ、よろしくたのも」



人懐っこそうな満面の笑み。
忍足の方はしばし優姫の顔を眺めていたが、ふと表情を和らげると、指し出された優姫の手をにぎった



「なんや同学年かいな、奇遇やな。俺は忍足侑士や、こっちこそよろしくな」

「うん!」



ぶんぶんとつながれた手を上下に振る優姫。
彼女は今声には出せない喜びを体全体で感じているにちがいない。


うぉおおテニプリキャラと握手しちゃったようぉおおおお!
といった具合に。


忍足が若干困惑していたものの、握手が終了。
星夜も自己紹介しなよー!と優姫が横の人物に話しかけようと横を向いたとき、しかし彼女は忍足ではなく、その後ろの人物を凝視していた。

優姫がそちらに目を向けると、そこには跡部と話す向日。



「星夜ーどしたー?」



あまりにも視線をそらさないため声をかければ、次の瞬間、星夜はバッと口と鼻を手で覆い、声を押し殺した叫び声をあげた。



「やばっ、可愛い!なにアレあんな可愛いと思わなかったやべぇどうしようチョー可愛いんですけどうわー!うわー!」



そういや…こいつ向日岳人大好きだった…

優姫はげっそりした。



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