Long Way

□always自由時間 パート2
1ページ/12ページ





「おはようさん」



朝。
いまだ覚めきっていない頭で、星夜がうだうだと鞄の整理をしていると、思わぬ来客がやってきた。



「……仁王?」

「一発喧嘩でもしとるかと思ったき、期待外れじゃの」



後ろの真田を見ながら、仁王がおどけた表情を見せる。
何が期待はずれだ、と星夜はあきれながら彼を見た。



「人の喧嘩を観戦?」

「まぁの」

「意外と暇人だな」

「そうじゃな」



星夜の言葉をさらりと受け流して、仁王が薄ら笑いを浮かべる。
なにを考えているのやら。



「仁王、何の用だ」



真田が仁王に声をかける。
すると仁王は、笑いをひっこめてから真田を見た後、再び星夜を見た。



「生憎とお前さんじゃなか、双烹にの」

「…俺に?なんだ」

「教科書貸してくれんかの、数学」

「?あぁ」



教科書?
何故俺に借りに来る?

星夜の頭に疑問ばかりが浮かんでくる。
しかし考えていても仕方がない。

星夜が不思議に思いながらも立ち上がってロッカーに向かおうとした

時だった。



仁王!貴様たるんどるぞ!

「っ!?」



突如、耳をつんざくような怒声がした。
咄嗟に耳をふさぐ星夜と仁王。

耳をふさぎながら後方に目をやると、そこにはたいそうご立腹の真田がいた。



「教科書を忘れ挙句の果てに──!」

すぐ後ろで怒鳴るな馬鹿がぁあああ!



そしてたいそうご立腹の星夜もいた。

星夜の怒りの声とともに真田の顔面に、彼の筆箱が飛ぶ。
しかし真田はそれをパシリと受け止めた。



「貴様、俺の筆箱を投げたな!物を粗末にするなど…」

「そうか物じゃなかったらいいんだな」

「させるか」

「ちっ」



間髪いれず星夜が真田の足を踏もうするも、真田はお見通しとばかりに足をよける。
そしてその流れで華麗に星夜の脛をけり上げた



いっ…!

「フン」



弁慶の泣き所ピンポイントだ。

机に顔を伏せて痛みに顔をゆがめる星夜を真田は満足そうに見る。



「少しは大人しくしていたらどうだ」

「真田てめぇ…」



悔しそうに星夜が声を絞り出す。
そしてその手がおもむろに真田の手をつかんだ……刹那



どら

「ぬ――っ!」



ブスリッと何かの先端が、ものすごい速さで真田の指に突き刺さった。
星夜がパッと手を離せば、うめき声をあげて真田が自らの指を抑え込む。



「双烹、き、さまぁっ……!」

「っは、ざまあ」



いつのまに手にとったのか、星夜の手には芯の出たシャープペンシルがあった。
今度は星夜が満足そうな顔をし、椅子に座って真田を見る。



「せっかくだ、指一本一本やってやるよ」

「……その必要はない

「!?――のぁ゛っ



急に真田の手が伸び、星夜の額に強烈なでこピンがかまされた。
ものすごい音がして、星夜が額を抑えながら後方にのけぞる。



「〜〜っにすんだ馬鹿ッ!」

ぐぬっ…!?」



しかし今度は星夜が真田の頭をつかんで額を机に殴打させる。

結果二人で額を抑える形になったが、それでも口論はやまず、ぎゃーぎゃーと二人は言い争い続けた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ