アンリーズナブル

□パンドラの箱
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取調室にて
手錠をはめられ、腕を後ろ手にまわしたまま椅子に座らされているのは、先日の爆弾製作犯のうちの一人

机を挟み、正面の椅子には跡部
その背後には、壁によりかかる形で星夜が立っている


「どこで材料を調達した。答えろ」


簡潔だが詰めるような跡部の問いを、犯人が鼻で笑い飛ばす


「そんなのテメェらで調べろよ」


実のところ
彼らがどのように材料を調達したかは、こちら側だけで特定可能である


爆薬の主原料となりえるものは原則として通販での売買が禁止されているから
彼らの居住地や作業場付近、存在している火薬製作工場すべての監視カメラ情報を抜き出して調べ
さらに念のため、彼らの住所をもとに流通情報をあされば完璧


ただ、それだと金色に多大な負担がかかる


誰が教えるか、な態度をとった犯人に対し
跡部が足を組み替えて姿勢を変えた


「今もう一人も尋問中だが、テメェと同じく渋ってる。先に答えたなら施設での待遇をよくしてやってもいいぜ」

「…!」


犯人が顔色を変えた


「具体的には…?」

「部屋のグレードアップ。ついでに好きな食い物を一食分リクエストさせてやる」


当然ながら収容所の部屋は狭い
好きなものなんて食べれない

ただ環境がよくなれば、色相が良化しやすくなり、外に出られる日が早まるかもしれない


そんな誘惑に、犯人がそわそわと視線を泳がせ始めた中
跡部は彼が何かいう前に椅子から立ち上がった


「ま、言わねえなら仕方ねえな。向こうの奴に──」

「花瑛、花瑛工業ってとこだ!調べればすぐ出てくる!」


あっさり白状した

跡部が動きを止め、机に片手をつきながら前かがみになって犯人を見下ろす


「一式そこからか?」

「そうだ!」

「何故そこにした」

「し、指定されたんだ」

「ほう?嘘吐いてた場合一か月椅子に縛り付けるぞ」

「マジ、マジだって!」


必死の形相の犯人を、跡部が真偽を見定めるようにじっと見る
しばらくそれをした後、彼はゆっくりと体勢を元に戻した


「いいだろう。裏が取れ次第対処してやる。以上だ」


跡部から机から離れ、出入口の扉へと向かっていく
彼が目の前を過ぎてから、星夜もその後に続く



二人して取調室を退室し、声の届かないところまで到達すれば、星夜は跡部に声をかけた


「もう一人の尋問まだだろ」


もう一人は、なかなか意識が安定せずにまだ話を聞けていない
つまり、跡部が言ったのは嘘だ


「ああいっとけば大抵は吐く」

「…吐いたな、確かに」


お見事、と淡白に褒めた星夜に、跡部がはっと渇いた笑いを返す


「分析官に報告しとけ。ついでに工場の監視カメラを調べて裏取りもだ」

「お前が行ったほうが喜ぶんじゃない?」

「馬鹿言ってねえでさっさと行け」

「はいはい」


そのまま星夜は跡部の横から離れて
特に挨拶もなしに、二人はそれぞれ総合分析室と一係居室へと向かっていった


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