アンリーズナブル

□縄張りへの侵入者
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押収した薬物は
爆弾製作犯から検出されたものと一致した


翌日
公安局は、従業員による違法薬物所持と取引、公務執行妨害の容疑で花瑛工場へと本格的な立ち入り調査を実施した

現場検証用ドローンを導入し、金庫の指紋を採取
工場内部の全監視カメラのデータと、従業員全員のサイコパス値の提示も要求


すると、制御室で襲いかかってきた男とはまた別の
爆破検証担当の人間が共犯として洗い出された


事が判明してみれば、単純なこと
爆破検証担当に協力者がいれば、金庫の中身を詮索されることはない


そして、実はこの金庫は隣の廃棄部品置き場のほうからも開けられる構造だった


廃棄部品置き場には監視カメラがなく
外に通じる裏口扉があるから、部外者でも出入りが可能

よっておそらく、爆弾製作犯との薬物取引はここの金庫を使って行われていたのだろう

万が一、どこかで監視カメラに部外者が映りこんでも、制御室側でスルーすれば何ら問題ない



現状抑えられたのは
薬物の管理手法と取引手法

残る疑問点は
例のサイトの運営者と、大型ドローンの操作手法
そして、薬物の入手先


ということで
優姫は跡部と共に、人生初尋問を行うこととなった



取調室に向かう道中は、優姫の体は緊張で見事に全身カチコチだった
声まで強張らせながら、少し前を歩く跡部に恐る恐る尋ねる


「ど、どうすればいいんですか」

「聞くべきことを聞くだけだ」

「そ、そうじゃなくて、心構えとか、声のトーンとかどうすれば」

「堂々としてろ。いくぞ」

「ひえ〜」


細かいのは実戦で習得しろ、とでも言いたげに、跡部が先に取調室に入っていく

ええい、もうどうにでもなれと優姫は心を決めて彼に続いた


薄暗い取調室
机に向こうに、見覚えがない方の男
つまり、爆破検証担当の方の犯人

その正面の椅子に跡部が迷いなく座ったので
優姫は密かにほっとして、彼の背後に立った

犯人はこちらを威圧するように睨んできている
しかし跡部も同じくらい鋭い眼光を向けていた


「新堂庄司。工場勤務三年目。業務内容は爆破検証のドローン操作とメンテナンス担当。間違いねえな?」

「………」

「これからいくつか質問をする。黙秘しようが出たらめ言おうが勝手だが、その分だけテメェを送りつける拘置所の条件を下げる。いいな」

「なっ…!」


新堂が動揺した顔になった


「んなのアリかよ!人権侵害だぞ!」

「黙れ。実際に罪を犯した奴に人権だなんだ言う資格はねぇ。豚小屋にぶち込まれたくなきゃ正直に答えろ」


跡部の言葉に、新堂が忌々しそうに唇を噛んで黙る


す、すげぇ…
跡部さんの圧半端ない…

ぽけーっとした顔になりかけ、優姫はあわてて表情を引き締める
ええい、羽織優姫、もっと緊張感をもてっと自分で自分を叱咤した


そうしている間に跡部が手元を操作して、自分のデバイス上であのサイトを表示する


「このサイトを運営しているのはテメェらか?」

「………」

「黙秘か。いいだろう、次」

「だっ…俺だ。俺らだ」


粘ることもなくサクサク進んでいこうとする跡部に、新堂が焦って白状する

めちゃくちゃ効果的だ

跡部は腕を組むと、そのまま椅子の背もたれに寄りかかった


「ではこのサイトを作るに至った経緯を説明しろ」

「……」


跡部の高圧さに少し反抗的な表情になりかけた新堂だったが
しかし、すぐに話し出した



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