アンリーズナブル

□監視官と執行官
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(スラム調査から数日後)


本日は比較的平和な日
現在一係居室にいるのは、優姫と切原の二人だけ

来週に偶然非番の日が重なったため、二人は改めてどこに出掛けようかと話し合っていた

のだが


「どうやって申請すればいいんだろう…」


執行官は、勤務時非番時に関わらず、自由に外には出られない

勤務時は上からの指示のもと動いているので申請はいらないが、非番の日となると……


「なんか適当に調査ですーってやりゃあいーんじゃねーの?」

「非番なのに…?」

「気にしないでしょそんなん」

「えーーそんなのガバガバじゃん」


公安局ともあろうものが、そんなガバガバなわけがない
うーん、と唸る優姫に、切原がまっとうなことを言った


「跡部さんに聞いたら?」

「んーそうねーそれがよさそう」


わからなければわかる人に聞くのが一番だ、が
いまは何処にいるのだろう


そう思ったとき、居室のドアが開き双烹が入ってきた


「あの、跡部さん見てませんか?」

「跡部?…見てないけど、トレーニング施設じゃないか?」

「トレーニング施設」


まだ使ったことがない
が、存在は知っている

非常に広く、眺めのいいフロアに多種多様なジムマシンが勢揃いしており
実践訓練用に、スパーリング用のロボットも備わっているという


双烹の口ぶりから察するに、跡部はよくそこを利用するようだ

施設も見てみたいし
直接やり取りできるに越したことはないので、優姫はトレーニング施設まで行ってみることにした


「ありがとうございます!いってきます!」

「え?あぁ、うん」

「待ってて赤也くん」


ビューンと効果音がつきそうなほどの素早い退室


優姫がいなくなって静かになった居室で、切原が遅れてツッコミをいれた


「いやフットワーク軽っ」



……



優姫がトレーニング施設へとたどり着けば、ジムマシンのあるエリアに目当ての人物はいた


「ふっ……ふっ……」


跡部が一人、黙々と体を鍛えている

額からは汗が滴っていて
かなりの時間やっている事が伺えた


そこまで緊急ではないし、彼が一息つくのを待とうか
と思った途端、彼が腕の動きを止めた

腕を下ろし、長く一息ついて
脇に置いてあったタオルを手に取って汗をぬぐう


ちょうどいい
声をかけるなら今だ…!と優姫が踏み出しかけたとき


「あ、跡部さん、あの…!」


先に、優姫のいる位置とは反対側の通路から人が飛び出してきた

女性だ
それも三人


あの制服は……たしか事務課?と思っているうちに
三人のうちの一人がおずおずと進み出て、抱えていたものを彼に差し出す


「あのっ、これ、受け取ってくださいっ!!」


タオルに包まれていたのはスポーツドリンクのようだった

まさか、差し入れとかいうやつ…?と考えているうちに
跡部はそれをすんなり受け取る


「気がきくじゃねーの。ありがとな」

「───!はぃぃ…」


跡部がフッと微笑んだ瞬間
女性の体がふら…と後方に傾き、そのまま力を失った

仰向けに倒れこんだところを、後方の二人がすかさず支える


「し、し、失礼しましたっ」

「あぁ」


顔を真っ赤にした二人が、跡部にすごい勢いのお辞儀をして
ほぼ意識のない一人は引きずられるようになりながら、女性たちはそのまますごい速さで去っていった



優姫は頭の処理が追いつかなった

なんだ、いまのは


口あんぐりで立ち尽くしている間に
跡部がマシンの座席から立ち上がって、一旦ロッカーの方を見てからこちらを向く


「──いつまで隠れてやがる。俺様に用だろ」

「!?は、はいっ」


ばれていた

っていうか、いま俺"様"って言った?


優姫が跡部の前へと飛び出れば
彼は今しがたもらったものを当然のように飲みだしていた



どう話をきりだそう

ええと、とりあえず


「あのー…おモテにあるんですね、すごく」

「まぁな」


謙遜しねえんだこの人

優姫はまたまた口あんぐりになるのを必死で耐えた


まあしかし
この先輩が、非常に顔が整っていることは確かである

彼の顔の造りは「端正」「容顔美麗」の例として辞書に載せれるくらい綺麗であり
初仕事のときは気づかなかったが、よくよく明るいところで見てみると、髪は金髪がかっているし目の色も碧だ

金髪碧眼、まるでどこぞの王子様
人によっては微笑まれるだけで失神するのも仕方がない

当然モテる自覚はありまくるだろうし
そしてたった今確証に変わったが、彼は普段は完全に「俺様」な性格だ


もうどこからツッコんだらいいんだ、と頭を抱え
いや別にツッコまなくていいかと我に帰って前を向きなおしたとき


「キャーーー!」


跡部が徐に上を脱いだ

予期していなかった半裸姿と、鍛え上げられた肉体美に全力で顔を手で覆ってそらす


優姫の悲鳴に跡部は怪訝そうな顔をした


「あーん?何だ免疫ねえのか?結構ウブなんだな」

「い、いやっ、いやっ、男性の半裸見たら普通っっ普通っこういう反応ですよ!もう!早く着てください!」

「汗を拭いてからだ」

「なんでもいいです!!」




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