アンリーズナブル

□追跡と先回り
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慢性的な人手不足の影響で、二件目の事故現場には一係が向かうことになった

事前に監視カメラで追った情報によれば、現場はホームセンター
映像では、特別速くもなく、遅くもない車がホームセンターの入り口脇から突っ込んでいき、店内をしばし走行したところで再び外へ出て、そのまま付属の立体駐車場へいく様子が映し出されていた



そこからは記録がないから、おそらく車は駐車場内で止まったままなのだろう


映像で確認した範囲では、怪我人はなし
救急車の出動要請も出ておらず


現場の緊急度はそこまで高くないように見受けられたが、今居室にいるのが四人なので、一係は今いる全員で現場に向かうことにした


運転席に樺地、助手席に跡部
後部座席の仁王は外を眺め、その隣で星夜は自らのデバイスで事件のデータを見直していた


「──二係と合同になるのか?この事件」

「おそらくな」


星夜の問いかけに、跡部が前を向いたまま答える


二係は現在一件目の事件の聞き込み調査中
偶然とはいえ、一件目の当事者に一係メンバーがおり、二件目の調査にも一係が向かうとなれば連携は待ったなしだろう


「このスピード感でいくと、三件目が起きてもおかしくねえからな」

「…そうだな」


事が悪化しきる前に、解決の糸口を見つけ出さなくては
跡部の呟きに相槌をうってから、星夜は手元に目線を戻した




現場へ到着後
駐車場出入口へのkeep outテープ張りはドローンに任せ、四人はまず店内の方へと先に立ち入った


割れた自動ドアから店内に入れば、中は思ったほどめちゃくちゃではなく
広い通路が幸いしたのか、主に倒れていたのは通路の真ん中にある「売り出し」商品のカートで、あとは棚にあった商品がまばらに落ちている程度だった


「念のため怪我人がいないかを確認しろ。棚の下敷きにでもなっていたら大変だ」

「ウス」

「了解」


跡部の指示に、樺地と星夜が返事をして、仁王は無言で三人がそれぞれに散っていく


足を動かす方は三人に任せるとして
跡部はその場に留まり、映像で見た車の様子を思い出していた


店内に突っ込んでいった車は、人に向かっていくわけでもなく、かといって手当たりしだいに突っ込んだわけでもなく
まるで店内を一周するように走っていた


入り口に近いこの位置では、目を落とす限り、タイヤ痕はなし
つまり急ブレーキ、急ハンドルをした形跡がないことから、"誤って"入り口から突っ込んだ線は薄い


ということは、何かしらの目的があった?


そこまで考えを巡らせたとき、不意に慌ただしい足音が迫ってきて
跡部が顔をあげれば、随分急いだ様子の星夜だった


「跡部、車を見てきていいか」

「あーん?」


車とは、立体駐車場にある例の暴走車のことか
先に現場検証をしてからと決めたはずだが、わざわざ来るということは…?


「仁王が先に行った」


星夜が指差した方向に目をやれば
まさに今、割れた自動ドアの向こうへと出ていった銀髪の後ろ姿が確認できた

とても堂々としているが、本来ならば監視官の指示なしに勝手に行動してはダメである


なるほど
彼女が一旦こちらにきたのは、そのまま仁王を追いかけることによって、自分まで監視官の許可なしに行動するのを避けるためか


「わかった。何かあったら連絡しろ」

「了解」


跡部の指示が出てすぐに
星夜が駆け足で、仁王の後を追いかけて行った



                                                 

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