短編

□お耳選びは重要案件
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パーク内のディズニーショップ
そのカチューシャコーナーにて


「あっははははは!」


私は爆笑していた
私の横にいる人物を見て、ひたすら爆笑していた


「ミニーちゃん、ミニーちゃんとっても似合って…ごほっははゲホッゲホッ」

「うるさい。少し黙れ」


私の横で、仏頂面のWikipediaにのれるくらい、いつになく顔を険しくしているのは
赤リボンのミニーちゃんカチューシャをつけた、私の彼氏、日吉若


三白眼どころじゃない目つきなのに、頭上はとても可愛らしいので笑いが止まらない


私がヒーヒーと笑っていると、若はカチューシャを不機嫌そうに、しかし商品なので丁寧に頭から取りはらった


「こんなもの被ったら浮かれてる感満載だろ」

「それがいいんじゃん!ディズニーきたら耳つけなきゃ楽しくない」

「いますごく不愉快なんだが?」

「今に楽しくなるから!ねっ!」


そういって、また無理やりミニーちゃんカチューシャを被らせる

あら可愛い


「ぶふっ、最高!」

「…せめてもっとマシなもんないのか」

「若は絶対ミニーちゃんなんだよ」

「はぁ?」


眉間にシワがよったはぁ?を言われてもなんてことはない
だってミニーちゃんだから


私がニヨニヨとしていると、彼は諦めたらしくそのままの状態で私に聞いてきた


「逆にお前は何にするんだ」

「んー若が選んで?」

「はぁ?」

「選んで!」


私の催促に
若はややめんどくさそうにカチューシャの売り場に目をやって

ふと別の棚に目をむけたかと思えば、そのままそちらに歩いていった

あ、ファンキャップの方だ…!


何を持ってきてくれるんだろう、とワクワクしていれば
彼が持ってきたのはあんまり可愛くないものだった


「これでどうだ」


トイストーリーのワニだ
名前なんだっけ


「もっとかわいいの…」

「つべこべいうな。被れ」

「うわー!もう」


押し込まれるようにしてワニを被せられる

顔にかかった値札をよけがてら見れば、レックスと書いてあった

ワニの名前こんなだったんだ


「ぷっ…喰われてるみたいだな」


前を向けば、私を小馬鹿にしてくるミニーちゃん
やばいミニーちゃん嫌いになりそう


ただ自分でも鏡を見てみれば、なるほどたしかに捕食されているみたいだった


「…ほんとにこれ被ってほしい?似合うと思う?」


絶対これ嫌がらせだろ(レックスには悪いが)、とじとっとした目で若を見れば、彼は腕を組んでしかめ面


「めんどくさいやつだな、被りたいものがあるなら最初から自分で選べ」

「そういうこといってるんじゃないの!若が心の底から私につけてほしいやつ選んでほしいの!」


今度ははぁーとこれみよがしにため息をつかれる

もう、何よ!といよいよ本格的にむすっとしかければ
被っていたレックスが取り払われ、入れ違いにカチューシャがサクッと差し込まれた


顔をあげて鏡を見る
ミッキーだ


「これでいいだろ。……似てるし」


若がミニーで、私がミッキー
ミッキーとミニーは誰しもが認めるカップルで
私と若もカップル


「えへ、えへへ」

「何だにやけて」

「これにする」

「ふん、勝手にしろ」


鼻を鳴らしてそっぽを向いた彼の腕にぎゅっとしがみつく

こういうところが大好きだと思った





お耳選びは重要案件



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