短編

□部屋についたら……
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日の傾くころ
観光地巡りを経て、私とディーノはホテルへと到着した

先に入っていいぜ、と促され
部屋のドアを開ければ、そこは広々としたスイートルーム


「うわー!広い!」


目の前に広がった非日常に、私は嬉々として、あらゆる部屋を覗きにいった

ミスト付きの広い浴室と大きいバスタブ
大理石の敷き詰められたトイレ

大きなキッチンに、ふかふかのソファーと特大画面のテレビ
バルコニーへ続く大きな窓からは、外に出ずとも綺麗な景色が望める


目を輝かせたまま振り返れば、ディーノが温かな眼差しでこちらを見ていた


「気に入ったか?」

「勿論!」


彼にとっては普通かもしれないが、私にとっては大豪邸だ


私は駆け足で、まだ入っていない残りの部屋、寝室のほうへと向かった

どれだけ広いんだろう、とワクワクしながらドアを開ければ
なんとベッドが一つしかなかった


「え…」


戸惑いながら、リビングルームのほうにいるディーノを振り返る


「ベッド…一つ、だけど?」

「そうだぜ」


何か問題あったか?という顔のディーノに、なんだか一方的に恥ずかしくなる
私は気を取り直して寝室へと入り込んだ


とても大きいベッドだ
あまりベッドの規格には詳しくないが、俗に言うキングサイズとかだろうか

少しマットレスを押してみれば、とてもふかふかで
枕も、とても大きくて程よい弾力だ


「すごい、寝心地良さそう。ねぇ、ディ──!」


リビングルームにいる彼に声をかけようと振り返った途端
予想外に彼がすぐ近くにいて、私は一瞬息が止まった


「び…っくりした」


脅かさないで、と言えば、悪い、という返事とともにディーノがまた一歩こちらに寄ってくる
不思議に思って顔を見上げれば、彼の目がじっと私を捉えていた


ああ、この目は危険だ


「ルームサービスとかって…あったりする…!」


話をそらして、脇から通り抜けようとすれば
すかさず手を捕まれて、ディーノの腕の中へ

触れた体温と、腰に回ってきた腕が、私の心拍数を上げていく


「でぃ、ディーノ?」

「ん?」


彼の手が、私の頬を撫でて
一時も私から外さない、熱のある視線にくらくらする


「ディーノ、待って」

「何をだ?」

「それはっ…!」


降りてきた唇に、言葉をかき消されて
求められるままに私はキスを受け止めた


何度か重ねていくうちに、ディーノの腕が私の体を意味ありげに触りだして

キスの合間に、なんとか声を出す


「シャワー…まだ…」

「俺もだぜ」


腰にあった彼の手が
私のトップスをめくり上げて、直肌を触っていく

無駄だとわかっていながらも、その腕に手を添えて少しの力をいれる


「ねえ…だから、シャワー入ってから…」

「その時はその時。今は今」

「きゃっ」


触ったばかりのベッドに押し倒されて
私は少し早めの夜を過ごす羽目になった




部屋についたら……




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