短編
□朝はいつでも忙しい
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「うわーーーーーー!」
朝一番
紺の悲壮感満載の絶叫が響き渡った
「どうしてくれるんですか!今日一限なのに!」
説明しよう
大学生である紺は昨夜も計画的に目覚ましアラームをセットし、そのアラーム通りにちゃんと目を覚ました
しかし、起きようとしたところを雲雀に引き止められ、すったもんだしているうちに、出発時刻まであと30分になってしまったというわけである
大焦り大慌てで洗顔をする紺に対し、雲雀は罪悪感のかけらもない
「サボればいいじゃない」
「何言ってるんですか!」
濡れた顔のままくわっ!と険しい顔をした紺だったが、しかしその間も惜しい
ヘアバンドをしたままタオルで顔を拭きつつ、紺はリビングを駆け抜けた
そして自室からやや不完全な状態で服を着て出てくると、メイクポーチと先ほどまで着ていたパジャマを手に持ち、再び洗面所へとダッシュ
不幸にも跳ねていた毛先を、悲鳴をあげながらなんとか直し
やっつけで化粧をし終え、ドタバタとリビングに戻ってくれば、雲雀は他人事のように悠々とソファーに座っていた
紺は激怒した
「ちょっと、何普通にくつろいでるんですか、少しは申し訳なく思ってくださいよ」
「だからサボればいいじゃない」
「はいーー?並中時代なんて遅刻とかサボりなんてしたらあんなに怒ってたのに!あれはなんだったんですか!?」
「今は僕の学校じゃないもの」
「ガバガバ判定!!」
さらにもう一発不満をぶつけようとしたところで、ハッとして現時刻をチェック
出発時刻まであと10分を切っていた
紺はお小言を放棄した
「あーーもうご飯いいや。恭弥さんは何か適当に食べてくださいね。食パンはあったはずなので」
「……」
「えーとあとはえーっと、あっ!?レポート入れたっけ!?」
紺は再びドタドタと自室へ駆けていった
何やらわーわー言いながら、リビングにまで聞こえてくるレベルでドタバタしている
そこで、雲雀が何か思い立ったようにソファーから腰をあげ、紺の部屋へと向かった
彼が半開きのドアに手をかけようとしたところで、紺が部屋から出てくる
「ああもう邪魔!!どいて!」
雲雀が傷ついた顔になった
紺は無視した
雲雀の横をすり抜け、冷蔵庫に寄って麦茶を一杯飲んでから、紺はそのまま玄関へと駆けて行った
チラッと腕時計を見やればちょうど出発時間だ
下駄箱から靴を取り出し、いそいそと履いていれば
後ろから早足で足音が近づいてくる
「紺、待って」
あ〜〜もう!いい加減にしてくれ!と振り返って言いかけた時
「今日雨降るよ」
「!」
目の前に、小型の折り畳み傘が差し出された
自分は傘を入れていなかった
なるほど、先程の何かいいたげな様子はこれのためだったのかと、紺は雲雀を邪険にしてしまったことを反省した
「ありがとうございます」
きちんとお礼を言って、受け取って、鞄にしまう
そして紺は改めて雲雀に出発を告げた
「では!行ってきます!」
「……ねえ、やっぱり一限さぼったら」
「サボりません」
・・・
「離せぇえええ!!一限出席日数カウントされるやつなんですよぉおお!!」
ドアノブにしがみつく紺
紺にしがみつく雲雀
出発時刻はとうに過ぎている
「教授名教えなよ。君をフル出席にさせるから」
「不正じゃないですか!!てか無理ですよ、大学は並盛郊外…」
「咬み殺して脅せば済む話だよ」
「全然済まねえですよ!!おりゃっ」
「ヴッ!?」
紺が小瓶から放った唐辛子スプレーが、雲雀の顔にヒット
さすがに顔を抑えて悶絶する雲雀を尻目に、紺は家を飛び出した
朝はいつでも忙しい