Long Way
□初登校
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しかし忍足や向日とは一応初対面。
不審に思われることは避けたい。
優姫は愛想笑いを浮かべながら、横にいる星夜を思いっきり肘鉄した。
ハッと星夜が我に返り、目の前の忍足を視界に入れる。
「あぁ、俺は双烹星夜、女な。よろしく忍足」
「女な、って…嬢ちゃんまんま女やで」
「いいだろ、くせなんだよこうやって自己紹介すんの。それによくお前それでも女かって言われるから」
「まぁ…せやなぁ、その一人称やからなぁ」
「言いやすいからな」
だってそうだろ?こっちだと二文字で済むんだよ…それに
と星夜がよくまわりにしている言い訳(?)を忍足に始めようとしたとき、そこに用をすませたらしい向日がひょこりと顔をだした。
「侑士ー何ナンパしてんだよ」
「誰がナンパやねん」
ピシリッ
星夜の動きがとまった。
「自分俺のこと何やと思うとるんや」
「え、足大好き人間」
「んんん……そら脚フェチやけどな、その言い方やと俺がただの変態みたいに聞こえるやん」
「?違うのか」
「ちゃうわアホ」
忍足と向日が他愛のない会話を繰り広げる。
その間もじーーっと星夜が見つめているので、さすがに向日がそれに気づき、ふと星夜を見る。
そして両者の目があった、瞬間
星夜がシュバッと優姫の後ろへ移動し、優姫の肩にしがみついて顔を伏せた。
「くそかわいいくそかわいいくそかわいいかわいいかわいい」
そして何やらブツブツといいながらずっと悶絶している。
「?どうかしたのか」
向日が不思議そうな顔で優姫とその後ろにいる悶絶ピープルを見る
優姫は苦笑いのまま、向日と対峙した。
「はじめまして〜羽織優姫です!よろしくたのも」
「おう、俺は向日岳人、よろしくな。で、えっと」
「あ、後ろのは双烹星夜だから。なんとなく覚えといて」
「お、おう」
不思議そうな顔をして星夜を見やる向日に対して、優姫はごまかすしかない。
後ろの双烹を優姫がひじでどつくと、双烹がふぅ〜と深い息をはいて優姫の背中からはがれた。
「…失礼。改めて、双烹星夜だ。よろしくな」
「おう、よろしくな」
理性と平常心を必死に保とうとしながら、星夜が向日と対峙している。
見ているだけで面白かったが、向日が何かの被害にあってはいけないので、優姫は星夜を再び跡部の前まで連れて行った。
「で景ちゃん、今後のことなんだけどさ」
「あぁ、校長に連絡しに行ってやるよ」
「「校長?」」
いきなりの跡部の発言に、優姫と星夜の声が見事にハモる。
「お前ら学校いくんだろ?だから氷帝の校長に連絡すんだよ」
跡部が得意そうに言い放つ。
その際、星夜の表情が少しばかり変わったが、それとは対照的に、優姫は感動した表情をした。
「アチョベ素敵!!」
「誰がアチョベだ」
「なんや、転校生やったんか」
「え?う、うん!そうなの!」
「ん?ほならなんで跡部が手続きするん?」
「あぁううん、あの、ちょっと跡部家に縁があってというか、ついでにやってもらえって」
「…ふーん?」
「んじゃ、俺様は行ってくるぜ」
優姫が忍足の追及をなんとかかわしている間に跡部が歩を進め始める。
しかしその時、それを制止する声が部屋にひびいた。
「おい跡部。ちょっと待て」
跡部の動きが止まり、優姫と忍足、向日が声の発信源へと視線をむける。
声を発した人物、星夜は、続けざまに言った。
「どうせだから俺は違うとこに行きたい」
「あーん、氷帝じゃ不満なのか」
「うーん…不満じゃねーけど、でも行きたいところがあるんだ」
「どこだ」
跡部の問いかけに星夜が一旦優姫を見る。
不思議そうな顔をする優姫と目を合わせた後、星夜はニヤリと笑った。
「立海大付属希望だ」