Long Way
□充実(?)した一日
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ミーティングは屋上でするらしい。
道中質問攻めした宍戸によると、いつもは室内の会議室などを使うらしいが、今日はレアケースらしい。
ドアが開いて、涼しいような、少し肌寒いような風が髪を後ろへなびかせる。
「ったく、跡部の奴、なんで今日にかぎって屋上なんだ…」
宍戸がぼそりとつぶやくのが聞こえる。
優姫は顔にあたる風を目を閉じて感じ、それから前へと足を踏みだした。
「跡部の野郎は?」
「まだ。ってあれお前っ!」
宍戸の後ろにいた優姫に気付いた向日がこちらを指差す。
そこにいた全員が一斉に優姫に視線を向ける中、忍足が向日の手をパチンと叩いた。
「人指差したらアカンで岳人、また会うたな優姫」
「うん、昨日ぶり」
「なんだ、お前ら知り合いだったのか?」
宍戸が二人を交互に見ながら芥川をおろす。
優姫はその横にちょこんと座り、寝ている芥川の顔を覗き込んだ。
「うわ、可愛いっ!何この子エンジェル!?きゃーっ!食べちゃいたい」
「……変態がおるわ」
「お前人のこと言えねえだろ」
「ひどいなぁ岳人、俺は健全な男子やで?」
「100%それはない」
「せめて1%くらい可能性残しといてな!」
痛烈な、というか卑劣なツッコミを宍戸が入れたとろで、屋上のドアが開く音がする。
「全員そろったか」
跡部と樺地の登場だ。
だが、集合時間は5分ほど過ぎていた。
自分で言ったくせに遅刻し、それなのに堂々やってくるこやつはなんなのだろうか。
「oh!景ちゃんだYO!」
向日が食べていたご飯を吹き出した。
「誰だ今変な発言したのは…って何でお前がいやがんだ」
「やだなぁ忘れたのダーリンっ私のこと呼んだじゃないっ」
「俺様の記憶にそんなデータは残ってない」
「跡部さんの恋人だったんですか羽織さん!?」
「どこまで素直なんだ長太郎」
鳳が素でボケたので、宍戸が呆れたように言葉をかける
ちなみに日吉の中1じゃなかったのかという呟きは、優姫が聞こえなかったことにした。
跡部は優姫がいるのを大して気にも留めず、氷帝陣の輪の中に入ると、どこからか持ってきた椅子に腰かけた。
「──よし、始めるぞ、まず昨日のことだ。樺地」
「……ウス」
全員が席に着いてミーティングが始まった。
なんとなくしゃべってはいけないような気がして優姫は静かにお弁当を開く。
小声でいただきますを呟き、優姫は箸を動かした。
(数分後)
「――以上だ。各自こっからは好きにしろ」
ミーティングが終わって、全員が本格的にお弁当を食べはじめる。
優姫はそのころにはほとんどすべて食べおわってしまっていたが、まだ物足りなかった。
ので、
「いただきっ!」
「あっ、てめぇっ!」
宍戸のおかずをよこどりした。
「んーうまーいっ」
「人のもん勝手に食うなよ」
「いいじゃんいいじゃん」
「よくねーよ」
「こっちもいただきっ!」
「だから駄目だっつーの!」
箸でつかもうとする優姫とその手を払いのけて弁当をずらす宍戸。
微笑ましい光景である。
「ちぇー。じゃあジロちゃんの…」
「駄目だCー」
「いつ起きたんだお前」
「さっきー」
「ぶはぁっ、ジロちゃんかわゆー。もうこの世界来て良かったー」