Long Way

□always自由時間 パート2
2ページ/12ページ



一方…



「――ビンタはしないんじゃのぅ」



柳生のそばまで避難していた仁王は、愉快そうに二人を観察していた。
柳生がそんな仁王に心底深い溜息を送る。



「仁王君。貴方って人は…人を喧嘩させて何が面白いのですか」

「面白いぜよ、あの二人の喧嘩はのう」

「わざと数学の教科書を忘れたふりをして、あえて双烹さんに借りに来るほどですか?」

「プリッ」

「プリッじゃありません」

「ピヨピヨッ」

「ピヨピヨじゃ…って言い方の問題じゃないんです!



柳生が声を荒げれば、仁王は悪びれもせずに、おー怖い怖い、と形だけの降参ポーズをして笑う。
そして柳生が小言を言い始めるか始めないかのうちに、仁王はすたこらさっさと教室から逃げていった。



「ま、待ちたまえ仁王くん!」



柳生の追跡及ばず。



「まったく、仁王くんときたら…」



はぁ、と深くため息をつく苦労人。
仕方なしに柳生は、いまだぎゃーすかやっている真田と星夜を仲裁すべく、二人のほうへ向かった。



「だいたい貴様は言葉使いが悪すぎるのだ!品格をもたんか!」

「品格だぁ?それ持ったところで何の…メリット…が…」

「メリットだと?損得で物事…を…どうした双烹?」



こちらは、星夜がこときれる、ぜんまいじかけの人形のように、言葉をとめ、争いが一旦中断されていた。



「仁王はどこいった」

「うむ?そういえばいないようだ」



キョロキョロとあたりを、見回す星夜と真田。
柳生はそこに到着すると、二人に表面上だけの事実を告げた。



「仁王君ならもう帰りましたよ」

「帰った?」



星夜が教科書は……とつぶやいてから、しばし沈黙する。


数・秒・後



「に〜お〜お〜!」



謀られたと気が付いたらしい。
彼女ははじかれたように立ち上がり、教室を飛び出そうとする。
しかし、それを柳生が即座に捕獲した。



「始業1分前ですよ」

「放せっ!くっそあいつ謀ったな!」

「謀った?何を言っている」




真田の方は気づいていないらしい。
ぷんぷんと怒る星夜を、柳生は静かな言葉でたしなめた。




「謀られるほど喧嘩するくらいなら、真面目に小テストの勉強にでも取り組んだらどうです?毎回半分に達してないではありませんか」

「う゛っ…」



ズバリ言われて星夜が苦い顔をする。
そして見事に大人しくなった。



「……柳生の小姑」

「失礼ですね」

「むしろ姑」

「軽口をたたく暇があるなら勉強したまえ」

「う゛っ」



星夜の貶しをものともしない。
こいつと口論は無理だな、と星夜は悟ったのだった。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ