石の輝き
□第2話 決断
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月華は帰りの支度をしながら言う。茜も帰りの支度をしていた。
「月華?帰るの?」
月華達が帰ろうとすると、梨香が月華に話しかける。月華はいったん行動を止め、梨香の方を見た。
「…今日は…母さんに早く帰るように言われてるんだ。」
月華は言い訳を済まし、教室を後にする。茜はしっかりと後ろから付いて来た。
「…そうだよ…母さんに連絡しなきゃ…。心配してるよね?…多分…」
月華は少し考え込んでから、携帯を取り出す。母親に電話をしようとすると、茜に止められた。
「…駄目なの?」
月華は上目遣いで茜を見る。茜はゆっくりと頷いた。月華は溜め息を吐き、携帯を仕舞う。
「母さんに連絡させてよ…。母さんは敵じゃないよ…」
「…なぜ言い切れるの?梨香だって敵だったでしょ?」
茜は月華に現実を突きつける。月華は表情を曇らせ、若干うつむいた。
信じる事の何がいけないの?
そういう言葉が頭の隅に浮かぶ。そのまま、2人は言葉少なに歩いていった。
海人の屋敷に帰るのに、電車に乗る。最寄り駅から、いつもの方向の電車ではなく、真逆の電車に乗る。
電車に乗る前に、茜は後方を気にしていた。
「…どうしたんですか?」
月華は茜の様子の変化に気づく。茜に問いかけると、彼女は何も答えなかった。茜は後方を睨みきかせたまま、しばらく動かなかった。月華は首をかしげ、茜を見ていた。
「…こっち…」
不意に、茜は月華の手を引いて走り出した。月華はびっくりしながらも、ちゃんと茜についていった。
茜は月華をつれ、狭い通路に入り、突き当りで月華を自分の背にして身を翻した。
「…出てきなさい。後をつけていたのはわかっているのよ。」
茜は自分達が来た道を見て声を発する。声をかけられ出てきたのは梨香だった。いつもの彼女とはどこか様子が違う。そう思った矢先、梨香から表情がなくなった。
「いつから気づいていた?」
「学校を出たときから…」
梨香の問いかけに、茜は簡潔に答える。梨香はどうでもよさそうな反応を示し、ゆっくりとこっちに近づいて来る。茜は月華を守るように立ち、梨香を睨んでいた。