捧げ物
□最後の願い
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近づいてくる男に剣の刃先を向けながら訴える。男の足は止まった。
レイチェルはまず、彼らが敵なのか、味方なのかの判断をしていた。
「…人に名を聞くときは、自分から名乗るものじゃないのかな?」
「「………」」
男は手に持っていた番傘でレイチェル達の剣をはじき落とすと、薄らと微笑みを浮かべる。
警戒を強め、攻撃態勢に入るヴィンとレアードを止め、レイチェルは深い溜息を吐いていた。
「…私はレイチェルと申します。こちらがヴィンとレアード。私達はグランディアと呼ばれる地からこの地にやってきました。」
レイチェルは薄らと微笑みながら自分たちのことを話す。
少し不思議そうな表情を浮かべる3人に、今度はレイチェルが彼らのことを問いかけていた。
「…俺は蜂鳥。万金魚屋をやっている。こっちは俺の息子達。揚羽と蜘蛛だ。」
男は軽い自己紹介をすると、薄らと微笑み、他の2人のことも紹介してくれる。
息子達だと紹介された2人を見て、レイチェル達は少し驚いた。無理もない。揚羽と蜘蛛の2人の年齢と、父親である蜂鳥の外見年齢がどうしても合わない。
どう見ても、蜂鳥は30代で、その子供達は20代前半と言ったところだろう。どう考えても子供達の方が大きすぎる。
「…おそらく、養子か何かなのだろう。今一番確認になくてはならないのは、ここがどこなのか……それだけだ。」
「……そうですね。」
レアードは小声で訴えてくる。蜂鳥達も何かこそこそと話していたが、レイチェルは彼らに声をかける。
ここはどこ?
そう問いかけたのは双方ほぼ同時だった。しばらくの間、風が木々を吹き抜けていく音しか聞こえない。
「……何がどうなってんだ?
「…私に聞くな。……とりあえず、人里を目指しましょう。まずはこの森を抜けなけれは……」
ヴィンの問いかけに、レイチェルは彼を睨み付ける。その後身を翻し、歩き出した。
せっかくなので、蜂鳥達も一緒に行動する。
‡‡‡
数日森の中で道に迷い続け、ようやく森を抜けると、その先には大きな城があった。蜂鳥、蜘蛛、揚羽の3人は少し唖然としながらその景色を眺めていた。
隣で、レイチェルは眉間に皺をよせ、一人城に向かって歩いていく。ヴィンとレアードは軽い溜息を吐き、彼女について行き、蜂鳥達も顔を見合わせた後、一緒に歩き出す。