Legend3

□第3話
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「……この海を越えた先が……ラプア島だ。」

 あれから一週間。前回同様にシオンが勝手に城を抜け出し、リュイがそれについて行き、仕方なくチャールズも同行する。
 まさか同じことを繰り返す羽目になるとは思ってもいなかったが、今回はちゃんと行先は告げて来た。それだけで前回とは違う。そう考えながらチャールズは船が必要であることを訴えていた。

「…駄目ですよ。船なんて……」

 シオンもチャールズの言葉に同意し、船を調達に行こうとすると、リュイが2人の服をつかみ、訴える。2人は首を傾げながらリュイを見ていた。

「偵察の基本は、如何に相手に気付かれずに、近づけるか。こんな何もない海で、無人島に船が近づいたらおかしいでしょう?まぁ、ラプア島に町があれば別の話なのでしょうけど、あの島は昔キシロニアの海上前線だった。それに、かつてアビスの扉が開いた土地で、もっともアビスに近い場所。普通の人間なら、近づくだけで気がおかしくなる。そんな場所に、人なんか住めるわけがないんです。でしょ?」

「「………」」

 リュイは右手人差し指を立て、簡単に説明する。チャールズ達は彼女の言葉に何の反論が出来ずにいた。
 スージーと言い、リュイと言い、なぜ子供に言い負かされなきゃいけないのか。そう考えながら、船が駄目なら、どうやって島まで行くのかと問いかける。
 リュイは「んっと……」と言いながら軽く周囲を見渡していた。少しして、彼女は「来て。」とチャールズとシオンを手招きする。
 リュイが2人を連れて行った場所はそう遠くはなかった。軽く周囲を見渡し、ここで何をするのか問いかけると、リュイは時計を手に、「まだ早いな。」と呟いていた。

「…夜になると、引き潮で、ここにラプア島までの道が出来るんです。道が出来ている間に、島まで抜けられれば、気付かれにくいんじゃないですか?自然現象を疑うことはないし、夜で視界も悪くなるし……。あ、闇の一族って夜の方が視界が良くなったりするんですか?」

 リュイは満面の笑みで説明する。最後に首をかしげると、普通の人間と大して変わらないことを言う。リュイは満面の笑みで「なら行けますね。」と言う。とりあえず、日が暮れて、引き潮になるのを待つことにしていた。

「…そう言えば……ニグレドさん。来なかったんですね?」

「…この間、ルーシアの体ではまともに戦えないって気づいたみたいだからな。ついてきても足手まといになると思ったんだろう。」

 適当に腰をおろし、休んでいると、リュイが首を傾げて問いかけてくる。チャールズも彼女の言葉に簡単に話していた。彼の言葉に納得していると、不意にチャールズが持っていた通信機が鳴り出した。
 チャールズは一瞬表情をひきつらせた後、軽い溜息を吐き、通信に応答する。

「チャールズ!あなた何を考えているの!?たった3人でラプア島の偵察だなんて!!リュイに何かあったらどうするつもりよ!!」

「「………」」

 チャールズが声をかけるより先に、スイッチを入れた瞬間にセシルの怒号が響き渡る。リュイとシオンはすぐに耳を塞いでいたが、片手に通信機を持っているチャールズは耳を塞ぐことなど出来ず、しばらく耳鳴りがしていた。

「勝手に行動したのは悪いと思っているよ。だが、仕方ないだろ?リュイもシオンも帰る気はないと言うのだ。
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