時空の騎士
□(悪魔編)第七章 目覚め
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第7章 目覚め
リンに下界に送られ、アルベルはキースたちの後を追って歩き続ける。
「大体なんで私がこんな目にあわなきゃならないのよ!一週間の時間が空いたのよ!追いつくわけないじゃない!送るなら近いところに送ってくれればよかったのに…。気の利かない女ね…」
色々とぼやきながら突き進む。しばらく進んだところでアルベルは足を止めた。少し考え、踵を返す。
「やめよやめ。追いつかないのに必死こいて追いかける必要はないわ。そもそもが危険を伴う旅。一人で行動したほうが良いに決まって…」
そこまで呟き、再び足を止める。自分の持ち物は全てキースたちが所持している。それに、ニーナやフィレなのことを考えると、一人で行動する気がうせた。
アルベルは眉間に皺を寄せ、再び踵を返す。先ほどまで進んでいた道を歩いていた。
「…君って見ていて飽きないね?」
不意に後方から声をかけられ、振り返る。そこにはレインが笑顔で立っていた。
「…何か用?」
「別にたいした用はないよ。ただ、どうして君は一人でいるのかな?って…」
「あんたには関係ないことでしょ?」
「残念でした。君が彼らから離れて何かあると、困るんだよね?キースたちと喧嘩でもしたのかい?」
レインは笑顔で問いかける。彼の問いにアルベルは青筋を立て、彼を睨む。
「…変な事言わないでよ…。ちょっとリンのところに行ってたら置いていかれたの…」
「リン…?」
「女神様なんだって…自分で言ってたわよ…」
アルベルはそれだけを言って黙って先行していく。レインは彼女の後から付いて歩いていた。
「女のこの一人歩きは危険だよ?僕が一緒に行ってあげようか?キースに追いつくまで…」
「いらない。一人で十分。」
レインの申し出をアルベルは一刀両断する。レインは溜め息をはいた。
「君がよくても僕は駄目なんだよね…。さっきも言ったように君に何かあったら困るんだって…」
「アルベルよ!いい加減名前くらい覚えて!君って呼ぶな!」
アルベルはレインにそれだけを叫んで走り出した。レインは再び溜め息を吐く。
「困った子猫ちゃんだな。全く…」
レインはそれだけをぼやいてアルベルについて来る。アルベルは走るペースを上げていた。
「…待つんだアルベル!!」
不意にレインが叫んだ。急に呼び捨てにするな!と思って振り返ると、彼はアルベルを守るように彼女の前に立つ。
「…なに…?」
「…野党だ…」
レインはそれだけを言って前方を警戒する。アルベルも彼の視線の先を見ると、野党たちがものすごい勢いでこっちに走ってきていた。
アルベルもレインに習い武器を構える。野党たちはアルベルたちの横を素通りし、二人の前からいなくなった。
「…何なの…?今の…」
「………あれが原因…だね…」
「…?」
アルベルは後方に視線を送り野党を見送る。レインは前方に視線を固定させていた。アルベルも彼の脇から前を見る。それを見上げ、2人は硬直していた。
「…初めてみた。こんな大きな龍…」
「…僕も初めて見るよ…。まさか…もう悪魔が…?」
「そんなはずないわ!推測だけで変な事言わないで!」
レインの発言を受け、アルベルは怒鳴る。そのまま彼女は前に進んだ。