時空の騎士

□(悪魔編)第八章 涙
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第8章 涙





 チュンチュン。チチチチチチ…。

 静かな朝。何も変わらない平凡な一日。今日も一日…何も変わることはない…変わる…こと…。

「…キース様…そろそろ休まれてはいかがですの?三日三晩ろくに休んでいませんわ…」

 傍に立っていたルーシアは優しくキースに語りかける。

「…だが…あの二人がまだ…」

「ポールが見てますわ…ご安心くださいな?それにキース様もひどい怪我ですのよ?…ゆっくり休んでくださいまし…」

 そう言って彼女は彼を寝かせようとする。

「なぁ…俺は何を間違ってた?何を…ミスってた?…アルベルを一人にした事か?…レインを彼女の所に行かせた事か?あの男と…一人で戦った事か?ニーナを追いかけなかった事か?」

 布団をかぶせられ、キースはルーシアに問い掛ける。その事を問うと、キースは布団の中にうずくまった。

「キース様…貴方の判断は正しかったですわ。だからこそ、この王都が無事だったのです…」

「………………………」

「…お休みなさいませ。キース様」

「………………………」

 その言葉を最後に、彼女の足音が遠くなる。キースは部屋の中で一人になった。

 そうなった途端に涙がこぼれた。

「………………………」

 声をかみ殺しながらキースは泣いていた。

 …守れなかった…アルベルも…レインも…ニーナでさえも…。…誰一人…俺は…。

「…キース様…」

 不意に布団の上から小さな声が聞こえた。

「…アルベル様とレイン様なら大丈夫です!…だから、元気をお出し下さい…」

「………………………」

 何の根拠も無く言われた言葉はキースにとって何の慰めにもならなかった。

「本当ですよ!先程、お二人がお目覚めになられると言うビジョンが…」

「俺を元気づけようとしているんだろ?…フィレナがそんな嘘付く必要は無いよ…」

 布団の中からキースはフィレナに言う。

「…悪いけど…少し一人にしてくれ…」

 キースはそれ以降言葉を発しなかった。



£££



 布団の中にうずくまったまま出て来ないキースを、フィレナは上から眺めていた。「少し一人にしてくれ…」そう言われてもしばらくはそこを動くことはなかった。
 だが、徐々にこの場にいることすら辛くなり、フィレナは外に出た。

「………………………」

 部屋の外に出て、ダルシー達の所に行く。彼らもキースの感情が流れ込み、へこんでいた。

 世界各地では…悪魔による被害が続いている。…このままだと…世界が滅ぶ…。それが判っていながら…フィレナ達は何も出来ない…。…せめて…アルベル様がお目覚めになられてくれれば…。

 フィレナはそう思っていた。

「…あっ………………」

 もういるはずのないニーナの姿をフィレナは捜してしまった。フィレナは軽い溜め息を吐いて、アルベルの部屋に向う。
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