短編集
□魔女の子
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それは王都に攻め込む前夜。オレ達はリュイを城に行かせるために、幹部の一人を足留めすることを選んだ。
リュイも最初は物凄く反対したが、オレ達は彼女を説得し、事前に誰が誰を相手にするかを決めていた。オレの相手はロゼ=クレヴァー。正直、一番よく分からない能力を持つ奴を相手にすることはかなり不安だった。
「…ヘイン。」
「?…何?先生?」
オレは眠る前にヘインに声をかける。ヘインは首をかしげ、オレに用件を問いかける。
「…お前…ロゼに攻撃できたよな?何やったんだ?」
「?…特に何もしてないよ。ただ、力を開放させただけ。」
オレの問いかけにヘインはそれだけを答える。オレは「そうか…」と呟き、彼が鬼の一族だからかと考える。特に何の解決にもならず、オレは溜め息しか出なかった。どうしようかと考えていると。あることがオレの脳裏に浮かんだ。
「…もしかしたら……」
それだけを呟き、オレはゆっくりと歩いていく。リュイには少しその辺を見回ってくることを伝え、オレは10年親父と一緒に暮らした家に向かった。
その家は王都から少し放れた小さな村にあり、敵に気付かれずに辿り着いた。
「…本なんて…読んだ事ないからな……」
そんな事を小声で呟き、オレは本棚から一冊の本を取り出した。
もし、この先何かに行き詰ることがあれば…これを使ってみろ…。
子供の頃、親父はそれだけを言って本の中に何かを隠した。何を隠したのかは知らないが、オレが手にした本は中身がくりぬかれ、小さな木箱が入っていた。
ほんの中にあった木箱を回収し、オレは首をかしげる。木箱の中には小さな鉱石が入っていた。
「…これ……時鉱石…?時空の歪みを正常に戻せるもの…。何の役に立つんだ…?」
オレは首をかしげながらそれだけを呟く。色々考え、オレはあの時の光景が思い浮かんだ。
オレの攻撃がすり抜けたあの瞬間、少し空間が歪んだ様にも見えた。あの時のロゼが幻影ではないのなら……。そう考えながらオレは意を決する。
「…親父が残した頼みの綱だ。絶対に役立ててやる…」
オレはそれだけを呟き、時鉱石を強く握る。そのままそれをポケットの中に入れ、前線基地に戻って行った。
‡‡‡
そして次の日。