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□始まりの朝
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始まりの朝





 ここはとある国の王都。この街には強い兵士を育成するための施設…士官学校という学校があった。
 この学校では、戦術知識を学び、剣術を始めとする多くの戦闘技術を身につける学校だ。
 今日は国にとっても、学校の生徒達にとっても、大切な一日だった。皆が待ちに待った卒業試験。今日の結果さえ良ければ、国に仕えることが出来るのだ。
 学校中が賑わう中、廊下の片隅を勢いよく走り抜ける二つの影。
 右側を罰の悪そうな顔して走るのが、この学校で1番魔力の付けることの出来た少年、カムロ=ロビンソン。左側でカムロを怒鳴りながら走るのが、ラッセル=ヒューマー。彼はこの学校一の変わり者だった。
 実はこの二人、本来ならば今回の卒業試験の受験者なのだが、ちょっとしたミスで遅刻寸前だった。

「おいカムロ!受験する前に不合格になったら、お前を恨んでやるからな!」

「わかってるよ…ごめん。あんまし大声だしてると舌噛むぜ…」

 いつまでも同じ事を怒鳴り付けるラッセルに、カムロはいい加減呆れてきていた。ラッセルはカムロの対応にますます腹を立て、更に彼を怒鳴った。
 そう言うやり取りを続けながら、二人はとにかく試験会場に滑り込んだ。





 会場に滑り込んだ二人は即座に周囲を見渡した。会場には二人の他に人の気配はなかった。

「「…………………」」

 辺りを見渡す二人は、現状を理解すると、落胆し、その場にへたり込んだ。ラッセルは怒りが込み上がって来て、気付けばカムロにつかみ掛かっていた。

「だから言ったんだ!お前はこうなることを予想しなかったのか!」

「………………………」

 ラッセルの言葉を黙って聞くカムロ。彼は何も言わず、俯いたままだった。

「何とか言いやがれ!」

 そう叫んだ時だった。

「…………れ…………」

 カムロは小声で言葉を口にした。その言葉はラッセルには届かなかった。
 カムロはラッセルの襟元をつかみ、はっきりと先の言葉を口にする。

「殴ればいいだろ!僕が悪いんだろ?謝っても聞かないなら、最初からぐだぐだ言ってねぇで殴り飛ばしゃいいだろ!!」

 カムロに言われ、ラッセルは固まった。
 彼を殴る気はしない。むしろ、今冷静さを欠いてしまった自分を殴りたかった。

「…ごめん…カムロ…。そうだな…本来俺達の卒業は来年なんだもんな…気長に待つか…」

「………………………」

 そう言って和解した後、二人は馬鹿みたいに笑っていた。そんな二人の様子を、部屋の片隅で見ていた青年に気付いた時、二人は驚いて身を退いた。

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