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□第一章 夢の仕事
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第1章 夢の仕事
└Section1 噂の将軍
「………………………」
城の廊下を黙って歩いていると、色々な噂を耳にする。「あの人はああ言う人だ」「この人はこう言う人だ」「この人は昔あんなことをしていた」等といったくだらない噂。
だが、彼には噂されてもおかしくない程の実績がある。士官学校を卒業したあの日から、入隊数ヶ月といった異例の速さで、16歳と言う最年少の将軍が生まれ、国が手を焼いていた難事件も解決。国王暗殺計画も未然に防いだ。
最初の頃は本当のことを噂されたが、3年も過ぎると、自分が知らないことまで言われていた。
「ずいぶんとすごい噂になってますね?」
「!」
不意に、背後から音もなく近付かれ、耳元で囁かれて、ラッセルは驚きのあまりに飛び退いた(何度も止めろと言ったが聞きやしない)。
後ろにはあの頃とあまり変わらない容姿のリヒャルドが笑顔で立っていた。変わったと言えば、髪が伸び、背が縮んだ(自分が伸びただけ)ことだ。
「…何だよ…心臓に悪いからそれ止めろって何度も…」
「ハイ。言われてますね?何度も…」
わかってるなら止めろよと思いながら溜息を吐き、思い出したかのように質問する。
「一つ聞いても良いか?」
「その時点で既に質問してますよ?」
リヒャルドのその一言に、ラッセルは不機嫌になり、「もういいよ」と言って踵を返した。正直、この性格の扱いには疲れる。だが、嫌いじゃない。
「何を聞きたいのですか?ラッセル?」
リヒャルドは人の話を聞く気があるのかないのか、それが不明だった。ラッセルは一度立ち止まり、振り返って彼を睨む。臆さない。ラッセルは再び溜息を吐いて、聞きたかった事を聞いた。
「…噂されている内容…うざくないのか?」
「ハイ。もう慣れましたから…」
リヒャルドも自分と似たような事を噂されている事は知っていた。それが自分はうるさいと考えていたために聞いた問いだった。それをリヒャルドは満面の笑みで返された。二人共通して言われている噂(霊の姿が見える)と言う内容にも、慣れてしまったらしい。
「ラッセルも…そのうち気にしなくなりますよ?」
そう言って、リヒャルドは踵を返して自分の部隊の訓練を見に行った。ラッセルはリヒャルドを見送った後、しばらく足を止めて、城壁の一点を見つめる。
少しして…
「う〜〜。ごめんなさい〜…」
そう言って姿を現したのは一人の少女(?)。最近自分に付き纏うようになった幽霊だった。
「…お前さぁ…さっさと成仏しろよ…疲れるんだって…俺が…」
ラッセルは少女の霊をあしらうと、その霊は口を膨らませる。身に覚えのない約束を口にされ、そのことを否定すると、「呪ってやる!」と言って姿を消した。
ラッセルは軽く溜息を吐いて、自分の隊の所へと行く。
ラッセルの部隊はとても良い部隊とは言えず、それでも、命令には絶対従うといった意味不明の部隊だった。