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□第二章 不穏な影
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第2章 不穏な影
└section1 サウザニア
「………夢……か………」
またあの日の夢。忘れたいのに…忘れさせまいとでも言うかのように…毎日…。たまにはぐっすりと寝てみたい。そう思い、リヒャルドは体を起こして、着替える。
着替えた後は、適当な事をして時間を潰し、皆が朝食を済ませるのを待つ。時間になれば訓練所などに赴き、兵の訓練を見る。
あの日から、食事が全く喉を通らなくなり、こう言う生活を続けてきた。色んな人に食事を取っているのかを聞かれるが、そのつど、満面の笑みでもちろんだと嘘をついた。それも、彼がいなかったから出来たこと、この前イースタニアに行った時に感づかれ、いつか無理矢理何か食べさせられそうな気がしてならなかった。
「リヒャルド…?」
「何ですか?」
噂をすれば何とやら、ラッセルはリヒャルドの後ろにいた。取り敢えずいつも通りに対応する。
「…ちゃんと飯食ってんのか?」
「もちろんですよ。食べなきゃ死んでしまうではないですか?」
何時ものように笑ってごまかす。既に笑ってごまかせる限界を超えていた。食堂にいなかったことを指摘される。
「…人前で食事をするのが苦手なんですよ…」
苦しい言い訳かもしれないが、この城にはそういった人が数人いる。リヒャルドがそれであってもおかしくなかった。
「そんなんだから女に間違われるんだぜ。」
「…大きなお世話です。」
リヒャルドは踵を返し、ラッセルの前から立ち去った。ルミナは何度かリヒャルドの名前を呼んだが、彼は振り返らなかった。
「あ〜あ。怒らせちゃった。」
ルミナはリヒャルドの背中を見送りながら言った。ラッセルは無言で立ち尽くす。
「…あいつが嘘つくからだ…」
「嘘?」
ラッセルの言葉にルミナは首を傾げる。少しして、「八つ当たり?」と問い掛ける。ラッセルはその問いに答えなかった。
「あいつ…過去に何かあったんだろ?」
「…私…よくわかんない…」
ラッセルが溜息を吐いて仕事に戻ろうとすると、ルミナは「姉様なら、何か知ってるかも…」と付け加える。ラッセルは一瞬立ち止まって、彼女を捜しに行った。