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□第四章 迫り来る敵
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第4章 迫り来る敵
└section1 予兆
「…そうですか…ありがとうございました。」
戦いから一ヶ月。頼まれたことの報告をすると、彼は暗い顔をしていた。実際、何もわからなかったのだ。
「…明後日、セントリアで式典が行われます。私とルーシアが招待されていますので、護衛を頼みます。」
彼は窓の外に視線を固定したまま言い捨てる。ユリウスはその任務を快く引き受けた。
‡‡‡
戦争が終わった。入隊から今まで、少し前を歩く背中があった。だけど、それはもうない。
「………………………」
ラッセルは無言で仕事を続けていた。しばらくすると、大臣の使者がラッセルを呼びに来る。ラッセルは首を傾げながら大臣の書斎へと赴いた。
「…お呼びでしょうか?大臣?」
書斎でそう言うと、大臣は顎髭を撫でながらノーストリアの依頼を話す。何でも、摩訶不思議な事件があったそうだ。
「…ノーストリアの宮殿に、貴公の親しい人間がおるそうだな。頼んだぞ。」
「ハッ。」
ラッセルは一礼をしてから、書斎を後にする。
「…何も私たちじゃなくても良いじゃない…」
城を出て、駅で待っていると、彼女はぼやいた。明日の式典の事を告げられ、ラッセル黙って頷く。
「…明日、リヒャルド達に会えるのに…」
「式典は明日から1週間行われるんだ。終わる前に帰って来れば、いいだろ?」
口を膨らませ、ぼやくルミナに、ラッセルは笑いかけた。ルミナも笑って頷き、汽車に乗り込んだ。
ノーストリアに着くと、ピンク色のドレスが目に付いた。ラッセル達は無言で彼女に近づく。
「…意外ですわね…。リヒャルドに合うために来ないのかと思いましたわ。」
彼女はこっちに気づくとそう言った。
「…お前は行かないのか?招待されてるだろ?」
「えぇ。自国の問題をほっとけませんもの…」
ミッシェルは顔を逸らしながら言っていた。“道に迷う”から“行けない”のか。とラッセルは考えていた。
「マス…姉様?“摩訶不思議な事件”って何があったの?」
「百聞は一見に如かず。現場を見た方が早いですわ。」
ミッシェルはラッセル達を手招きして、ある場所へと連れていく。