A GREAT SOLDIER

□第4話 回想
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第4話 回想





 私が彼女に出会ったのは、随分と前の話しだ。私の前に現れた彼女は途方にくれ、崖下に身を投じてしまいそうだった。

「…どうかしたのか?」

 彼女は最近増えはじめた魔物に、怯えているのだろう。そう思って私は彼女に声を掛ける。
 私が彼女の肩に手を掛けると、彼女は「何ですか?」と言いたそうな顔して振り返った。その瞳は大きく見開かれ、とても無邪気な表情をしている。

「…何か悩みがあるのか?そのまま崖に身を投じるような真似だけはするなよ?」

「崖に?身を?…僕が…?」

 私の問い掛けに、彼女は首を傾げる。では、彼女はここで何をしていたのか…?その事を問い掛ける。彼女は「人を捜しています。」と答えた。
 人を?そう思って私は首を傾げる。私で手伝えたらと考え、捜し人の特徴を問いかけた。彼女は曖昧に微笑むだけだった。

「…特徴もわからず捜しているのか?見つかる訳がないだろ?」

「そうですよね…。ですが、待っていれば…いつか皆さんがご自分の足で僕の所に来てくれる。僕が気にしているのは…果たしてそれが間に合うのか…それだけです。」

 彼女は崖から見渡せる範囲を見渡し、溜息を吐いた。間に合う?何を行おうとしているのか…。そう思いながら、私は彼女を見ていた。

「ごめんなさい…。僕はこれで失礼します。」

「………………………」

 彼女は一礼して、私の前からいなくなった。私は彼女を見送り、自分の仕事に戻る。
 不意に、彼女がどこの人なのか疑問に思えた。この国人間ではないだろう。かと言って、隣国の人間にも見えない。私は密入国者を見逃してしまったのだろうか?
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