Legend〜もう一つの伝説〜
□第5章 トンネル
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「…母親と喧嘩別れでもしたのかい?」
「?…なんで?」
リックがそう聞いて来たのはイースタニア行きの汽車の中。スージーは首をかしげて問いかけた。
「…やけに感情入ってたからさ……」
「あぁ…。私じゃないけど、ヴィンセントがね……。小父さんと喧嘩したの。私ヴィンセントのお父さんが拉致された時、町にいなかったから詳しくは知らないんだけどさ……。ま、私も半年振りに家に帰ってみたらお母さんがいなかったんだけど……」
リックの問いかけに、スージーは表情を曇らせた。彼女の言葉を聞いて、気まずい空気が車内に満ちる。軽く落ち込む彼女に何を声掛ければ良いのか分からない。
「わぁ〜♪お兄様♪海ですわ♪」
「「………」」
不意に窓の外を眺めていたヴィクトリアが騒ぎ出す。場違いなテンションにチャールズ達は少しあきれた。
だが、今は彼女の能天気さに少し救われた気分だった。
「…2人とも聞いてくれないか?」
「「?」」
ヴィクトリアを一人はしゃがせ、チャールズはリックをスージーに声をかける。2人は首をかしげてチャールズを見た。
「…ヴィクトリアは最近医学にはまったんだ。それで、前々からイースタニアに行きたがっていた。あいつは暴走すると止められない上に、今回のように、誰にでもついて行く傾向がある。基本私が傍にいるつもりだが、あいつだけは1人にさせないで欲しい。」
「分かった。」
「うん。」
チャールズが2人にだけ聞こえる声で忠告すると、2人は頷いた。それから、チャールズ達ははしゃぐヴィクトリアの相手をしていた。
‡‡‡
次の日の夕刻。チャールズ達はイースタニアの王都に辿り着いた。イースタニアの国内に入ると、ヴィクトリアのテンションは最高潮にまでなっていた。
「…これから真っ直ぐ依頼主とやらの所にいくのか?」
「それなんだけど、私一人で行かせてくれないかな?チャールズ達のことは私から話しておくし、謝礼金ももらっておくから。とりあえず、ヴィンセントの家に行っていて欲しいんだけど……」