神の子

□第3章 陰のペンダント
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第3章 影のペンダント





 あれから3ヶ月が過ぎた。ロビンもすっかり明るくなったし、部隊の皆も、驚くべき成長を遂げた。

「…っと…これでいいかな?」

「ハイ。では、これは私の方から皆に渡しておきます。将軍は休暇中なのですから、妹様のところに帰られてはいかがですか?」

 ロビンの指摘に私は少し戸惑った。この間、私はクルミと喧嘩してしまったのだ。

「…うん…」

 帰れるかな?と思いながら私は家に向かった。





 思いの外簡単に家に入ることが出来たが、クルミは激怒していた。そもそも、喧嘩した理由が約束を果たせなかったからだ。
 今度の休暇にピクニックしよう…と約束したが、約束の日の直前、医者からのDr.ストップがかかって行けなくなった。わがままを言うクルミを叱咤すると、そのまま大喧嘩に発展した…と言う行き説だ。

「…お帰りなさいませ。アリスお嬢様。」

「…ただいま。」

 出迎えの使用人に挨拶して、クルミの部屋をノックする。

「‥‥‥‥‥‥」

 彼女はしっかりと扉に鍵を掛けて、私が入れないようにしていた。

「…クルミ…気分はどう?」

 私は扉ごしにクルミに話しかける…返事がない。

「…最近体調悪いの?」

 今度は後ろに居た使用人に話しかけた。

「いいえ。最近は元気にしていらっしゃりました。」

「そう…」

 使用人の言葉を聞き、頷いた。

「…クルミ…ピクニックしよう。」

 私の一言でその場の空気が固まった。

「…だって約束でしょ?違う?」

 そう言うと、扉から鍵が開く音が聞こえ、扉が3ミリ開いた。





 その後、私達はお弁当を持って近くの花畑に向かった。

「♪♪♪〜」

クルミはすっかり上機嫌になっていた。鼻唄混じりでスキップしながら歩いていく。

「これで、約束は果たせたかな?」

「ハイ♪」

 クルミは花畑に走って行き、花を摘んでいた。

「…ハイ。お姉様。」

  クルミは摘んだ花を花冠にして私に被せた。

「…何?」

 私は頭の上に乗せられたものに気をとられていた。

「プレゼント♪」

 満辺の笑みで言われ、ちょっと言葉を失った。

「ずいぶんと楽しそうだな?二人とも…」

 不意に、背後から声が聞こえて振り返る。そこにはクリストファー様がいた。

「…クリストファー様…どこから…」

 私は今思ったことを口にしていた。

「…伝えておかなくてはいけないことがあってな…」

「???」

 クリストファー様は私の隣に座った。クルミは一人で花を摘んでいる。

「…伝えておかなくてはいけないことって…何ですか?」

 しばらくの沈黙があり、私の言葉でクリストファー様は戸惑っていた。そんなに言い出しにくい内容なのだろうか…?っと思いながら彼の顔を見る。

「…クリストファー様?」

「…もし…お前に…」

「…お姉様〜♪」

 やっと話始めたところで、クルミはこっちに駆けて来た。

「…きゃっ」

 こっちに駆けて来たと思ったら、草に足をとられて転んだ。

「…あ〜あ…。何やってるのよ…この辺滑るから気を付けるように言ったよね?」

「…う…ふぇぇぇん…」

クルミは私が近くに行くと泣き出した。

「ほら、もう泣かないの。」

クルミをあやしながら振り返ると、クリストファー様はいつの間にか居なくなっていた。私は首を傾げながらクルミをあやし続ける。





 家に帰って、私達は今日の疲れを取る為に、すぐに床についた。

何を言いたかったのかな?ひょっとしなくても…言い出しにくい状況を作っていたのかな?

そんなことを思いながら私は眠った。





―止めて!!何も壊さないで!!―

 燃える広場…揺れる大地…唸る空…逃げる人々…。自然界の大暴走は止まらない…。
 そんな大惨事の中心で、小さな女の子が立っている。暗い表情…怒りの眼差し…。
 この大惨事は女の子が巻き起こした…悪夢の午後…。

―もう…何も…壊さないで…―





「‥‥‥‥‥‥‥」

  夢…嫌な夢を見た…怖い夢…あの子は…誰だったのだろう…。
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