神の子
□第5章 敵の狙い
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第5章 敵のねらい
先についていたロビンはディオスとエドワードの双方攻撃にあい、悪戦苦闘していた。
「…もうじき、アリス様がいらっしゃる。それまで持ちこたえろ!」
ロビンはいままでなんとか持ちこたえていたが、限界が近かった。
「いて凝る地の使臣すさびはぐる疾風だに舞うも赦さじ‥フリーズ」
私は魔法を放ち、敵を拡散させた。
「…アリス様…!…ケニー将軍…」
ロビンは私達の方を見て驚きと安心が半々なようだった。
「…あの男…裏切ったな…」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
ディオスはクリストファー様のことを睨んでいた。それに対してエドワードはなんだか悲しい顔をしていた。
「…神子の二人が揃われたら不利だ。撤退するぞ…」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「…エドワード!」
「…お兄ちゃん…」
「…わかった…」
そう言って、ヴァルキサス、ファーメリアの両軍は退却を開始した。敵が完全に姿を消しても、どこからか視線を感じ、スレイ達が残る全線基地に戻ることが出来なかった。
「…これ以上の時間は……!そうか…」
私はクリストファー様にこの場所を任せ、数人の部下をつれ、全線基地に戻った。
全線基地では、案の定、アルカパの兵士に襲われていた。たった今攻め込まれた感じで、帝国の残存兵に目立った外傷はなかった。
「スレイ!」
私は戦地について、大きな声で叫んだ。アルカパの兵は加勢に来た人数を見て、包囲されることを怖れたのか、一挙に退却していった。
「…あ…れ…?」
こんなに早く終わってしまう戦闘は初めてで私は少し驚いた。
「…みんな…アリスさんの顔を見て逃げ帰りましたわ…」
「…かなり怖れられてるんやな…。…流石帝国の神子や…」
ライラとハヤトは感心したように言っていた。
「…人を化物みたいに言わないでください…」
「その強さは十分バケモンや…」
私が口を膨らませて言ったことは、ハヤトに笑い飛ばされた。
「それより…これからどうしますか?アルカパはほっとけませんよ?」
スーザンはすごく複雑な顔をして問いてきた。
「…なら、今のうちにアルカパを落とすべきだな…」
そう言いながら、クリストファー様が戻ってきた。彼の登場にその場の全員が言葉をなくした。
「…他の二国は…?」
「先の戦いで損傷が激しいだろ?すぐには行動を興せんさ…」
「…やるなら今…ですね?」
私と彼とロビンだけが正気で、今後の方針を話し合っていた。
「…こことアルカパの首都の間に…砦が有りましたね?…敵勢力はそこに集中しているでしょうか?」
「…ここと首都の距離はかなりある。時間の短縮にそこを利用しているだろう…」
「では、そこに敵軍を釘付けさせれば、首都攻略がしやすいですね?…首都攻略を任せてよろしいですか?クリストファー様…」
「…わかった」
こうして次の作戦が決まったところで、メンバーの選択をしていた。ほとんどの部隊を首都攻略にまわし、スレイ達が私と一緒に行動してもらうことになった。
無論、クルミはお留守番。
「…ここが…その砦…」
砦の前まで来て、私は立ち止まった。
「…この中に、アルカパの主力部隊がいるのですか?」
ライラは砦を見上げながら問いていた。
「…あぁ。敵の将軍がここにいるはずだ。」
「その人を倒せばいいのね?」
スレイの一言にスーザンは言っていた。
「…そうなるんだろうな…」
スレイは曖昧に受け答えしていて、私の代わりに全てを応えている感じだった。
「…アリス…どうしたの?」
森の一点を見据えて私は黙っていた。そこに、ケティが話しかけてきたのに、私は気付かなかった。
「…誰だ!そこにいるんだろ!」
私は見据えた先を睨んだまま、そこに問いかけた。少しして、ファーメリアの軍隊が森の茂みから出てきた。
その中に見知った顔があり、私はほんの少し表情を和らげた。
「…スレイ…皆を連れて先に行って…。…ここは私が食い止める…」
「!…そんな…アリスさん一人では…」
「…大丈夫。中が終わるまでには終わらせる…」