神の子

□第6章 終わりなき戦い
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第6章 終わりなき戦い





 あれから1年。戦況は良くも悪くもなく、極々普通だった。私は何度か城に戻って陛下に戦況の報告をしたが、あの日以来、嬉しい報告はしていない。

「…アリス…」

 報告から帰って一息つくと、私を呼ぶ声がして振り返った。

「…クリストファー様…まだ、起きていらしたのですね?」

「…"様"をつけるな。」

「…すみません。癖です…」

 私は彼と出会った頃からこの呼び方で彼を呼んでいる…今更呼び方を変えられなかった。
 
「…あの…大分時間が過ぎてしまったのですが…これ…お返しします。」

 そう言って私は彼の刀を差し出した。

「…本当に今更だな…。…だが、それはお前が持っていろ。それを今返せば、お前は武器がないだろ?それに…俺にはもう、必要ない。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 私はクリストファー様の刀を受け取り、ありがたく使わせていただくことにした。
 その後、私は彼と外を少し歩いた。

「…隠れていないで…。…出てきたらどうだ?」

 外を歩いて少しすると、クリストファー様が殺気を感じとったのか、どこかの一点を睨んでいた。彼に声をかけられ、夜の暗闇の中からファーメリアの軍勢が現れた。

「…夜襲…ですか…」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 ファーメリアの軍勢を率いるディオスとレオンは暗い表情でそこに立っていた。彼らの後ろから、例の男がゆっくりと歩いてきた。

「…神子を殺せ…今更出来ないなんて言うまいな?」

「‥‥‥‥‥御意‥‥」

 そう言って彼らは武器を構えた。

「…ディオス…レオン…」

 私は彼らとはちゃんとした戦場で戦いたかった。だが、彼らは彼らの守るものの為、ここに来たのだろう。

「…アリス…剣を取れ…あいつらは…まだ救える。」

「…ハイ」

 クリストファー様の言葉に、私は控えめに頷いた。

…母さん達の為だ…迷うな…何も迷うな…

 不意にディオスの一言を聞き取れ、何かが私の頭の片隅をよぎった。

「…まだ救える…そう言うことか…」

 私はディオスを標的に戦った。剣を交えながら私は彼に話しかける…。

「…そのまま聞いてください…」

 私の言葉をディオスは聞く耳をもってはくれなかった。もとより、仲間の一人を殺した相手の言葉は信じてはもらえないだろう。

「…ディオス…私の話を…キャッ…」

 彼の攻撃をギリギリの所で止め、そのまま彼の動きを封じる。

「…あなたの母君、エリアーノとホムンクルス、エミリは我々が保護しております。…もう、あなたがそいつの言いなりになる必要はないのです!!」

「…母さんと…エミリを…」

 ディオスは呆気にとらわれ、力が抜けていた。

「ディオス!!」

「…レオン…俺はもう…ミハエルのやり方にはついていけない…。…俺はこの先、俺のやり方で行かせてもらう…。だから…ミハエル…貴様を殺す…」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 ディオスは標的を私達からミハエルに変えた。

「…私の言葉を信じてくれるのですね?」

「…嘘だったらお前を殺す…」

 私はディオスの言葉に笑っていた。

「…裏切り者には…死をもって償ってもらわねば…」

 ミハエルはそれだけ言って気を貯めた。以前よりも大きな炎の塊を私達に向けて放つ。

(…防護壁が間に合わない!)

 心のうちでそう叫び、私は咄嗟にディオスを庇って身構えた。

「‥‥‥‥‥‥??」

 そろそろ炎が焼き払うはずだが、それがない。私は恐る恐る顔を上げた。

「…怪我はないな?二人とも…」

 私達の目の前にクリストファー様が立って防護壁を張っていた。

「クリストファー様…」

「…次が来る。俺は訳あって連続に技を使えない…お前がやれ…」

「ハイ…」

 そう言って私はクリストファー様の前に立つ。奴が放つ炎をあの日のように跳ね返す。
 そして、三撃目を放たれる前に奴を攻撃して、術の集中を遮る。

「…何度も同じことをさせるほど、私は優しくなくてよ…」

 私がそう言うと、ミハエルは舌打ちをしていなくなった。

「!!‥‥‥‥‥‥‥」

 消える際に使った技は私がよく知る技だった。神の子だけが使えると言われるテレポート。それを奴が使って逃げた。

「…何で…あいつが…?」
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