神の子

□第7章 終戦の祝福
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第7章 終戦の祝福





 ヴァルキサスを落として半年、私達は今、決戦の地へと赴いていた。

「…以上のことをご報告させていたたきます。」

 私が送った偵察兵は敵勢力と配置を報告した。

「…エドワードを待っている時間はない…進軍する…」

 そう言って私達は進軍を開始する。





「…来たな…ここから先には…進ませない…」

 ミハエルが逃げたのはファーメリアにある塔の中。入り口をクロスの部隊が固めていた。

「…お兄さんがいないのに一人で大丈夫?」

 私はクロスにそう言って笑いかける。クロスは唇を噛みしめ、俯いていた。

「…ここは任せたわよ…私は上に行く…」

 ディオスにそう伝えて私は走り出す。

「アリス!?」

 ディオスは私を止めようとしていたが、私は止まらなかった。敵の間を縫って走り、重装兵が振り上げる武器を足掛かりに手近な窓に飛び付く。そのまま一気に最上階に向かった。





 最上階では、ミハエルが居るはずだが、そこには誰も居なかった。

「…偵察の情報が間違えていたのか?」

 私は周囲を警戒しながら辺りを見渡した。

「…いる…奴の気配を感じる…この部屋のどこかに…」

 バタンッ‥‥‥‥‥

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 私が入って来た入り口が突然閉まった。その瞬間、私は身構えた。
 しばらくの間静寂とした空気が流れる。奴は依然として姿を見せる気配はない。

「‥‥‥‥‥!!!!」

 突然、私の中に誰かの意識が入った。そのまま、私は誰かの意識に飲まれていく…。

「‥‥‥くそ‥‥‥油断‥した‥‥」

 私の意識は闇に消えた。





「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 声…が…聞こえた…誰?

「クルミ!戦場でのよそ見は命取りよ!」

「ごめんなさい!ケティちゃん…」

 ケティに怒られ、わたくしは前を向き直る。でも、さっきの声は苦しそうだった。

「…お姉様…大丈夫ですよね?」

「さあな…だが、ここの連中を全員気絶させてから中に入る…」

「…ハイ。」

 取り敢えず、この中では一番の実力者であるディオスが指揮官の代理。皆彼の指示に従う。

「…お兄ちゃんがいなくても…僕は戦える!」

 相手の指揮官らしき少年は何かを吹っ切った様な顔をしていた。

「…あの子…」

 少年の姿がどっかの誰かを連想される。わたくしは自分自身に怒りが込み上がる。

「…クロス!お前は洗脳されていないだろ?なぜお前はそこにいる?」

 ディオスはそう叫びながら、少年の説得に入る。

「…あの子…クロスと言うのですか?」

「?…あぁ。それがどうした?」

「…いいえ。ただちょっと…気になりまして…」

 ディオスとそんな会話をして、わたくしはクロスの元へと向かった。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 クロスはわたくしを恐れたのか、魔法を放つ。だが、それはわたくしには当たらない。
 立て続けに何度か同じことをしていたが、全く持って効果がない。そのうち、クロスの間合いに入ったのか、彼は直接攻撃を繰り広げる。

「…いい加減…目を覚ましなさい…」

 わたくしはクロスの目の前まで来てそう言った。クロスが振り上げるオーブを押さえ、攻撃を封じる。
 彼は些細な抵抗を見せたが、じきにおとなしくなった。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 沈黙が続く中、周囲では誰も殺してはいけない戦いが繰り広げられる。
 こっちは殺さずを貫いているが、相手は間違いなくわたくし達を殺す気だ。その思いの違いが、わたくし達を不利にしていた。

そんなとき…

 一陣の風が戦場を駆け抜ける。

 風が駆け抜けたところは敵兵が倒れている。それをやった人はわたくし達の遥か後方にいた。

「…エドワードさん…」

 ロビンが誰よりも早くその存在を認識する。
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