神の子
□第7章 終戦の祝福
1ページ/6ページ
第7章 終戦の祝福
ヴァルキサスを落として半年、私達は今、決戦の地へと赴いていた。
「…以上のことをご報告させていたたきます。」
私が送った偵察兵は敵勢力と配置を報告した。
「…エドワードを待っている時間はない…進軍する…」
そう言って私達は進軍を開始する。
「…来たな…ここから先には…進ませない…」
ミハエルが逃げたのはファーメリアにある塔の中。入り口をクロスの部隊が固めていた。
「…お兄さんがいないのに一人で大丈夫?」
私はクロスにそう言って笑いかける。クロスは唇を噛みしめ、俯いていた。
「…ここは任せたわよ…私は上に行く…」
ディオスにそう伝えて私は走り出す。
「アリス!?」
ディオスは私を止めようとしていたが、私は止まらなかった。敵の間を縫って走り、重装兵が振り上げる武器を足掛かりに手近な窓に飛び付く。そのまま一気に最上階に向かった。
最上階では、ミハエルが居るはずだが、そこには誰も居なかった。
「…偵察の情報が間違えていたのか?」
私は周囲を警戒しながら辺りを見渡した。
「…いる…奴の気配を感じる…この部屋のどこかに…」
バタンッ‥‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
私が入って来た入り口が突然閉まった。その瞬間、私は身構えた。
しばらくの間静寂とした空気が流れる。奴は依然として姿を見せる気配はない。
「‥‥‥‥‥!!!!」
突然、私の中に誰かの意識が入った。そのまま、私は誰かの意識に飲まれていく…。
「‥‥‥くそ‥‥‥油断‥した‥‥」
私の意識は闇に消えた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
声…が…聞こえた…誰?
「クルミ!戦場でのよそ見は命取りよ!」
「ごめんなさい!ケティちゃん…」
ケティに怒られ、わたくしは前を向き直る。でも、さっきの声は苦しそうだった。
「…お姉様…大丈夫ですよね?」
「さあな…だが、ここの連中を全員気絶させてから中に入る…」
「…ハイ。」
取り敢えず、この中では一番の実力者であるディオスが指揮官の代理。皆彼の指示に従う。
「…お兄ちゃんがいなくても…僕は戦える!」
相手の指揮官らしき少年は何かを吹っ切った様な顔をしていた。
「…あの子…」
少年の姿がどっかの誰かを連想される。わたくしは自分自身に怒りが込み上がる。
「…クロス!お前は洗脳されていないだろ?なぜお前はそこにいる?」
ディオスはそう叫びながら、少年の説得に入る。
「…あの子…クロスと言うのですか?」
「?…あぁ。それがどうした?」
「…いいえ。ただちょっと…気になりまして…」
ディオスとそんな会話をして、わたくしはクロスの元へと向かった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
クロスはわたくしを恐れたのか、魔法を放つ。だが、それはわたくしには当たらない。
立て続けに何度か同じことをしていたが、全く持って効果がない。そのうち、クロスの間合いに入ったのか、彼は直接攻撃を繰り広げる。
「…いい加減…目を覚ましなさい…」
わたくしはクロスの目の前まで来てそう言った。クロスが振り上げるオーブを押さえ、攻撃を封じる。
彼は些細な抵抗を見せたが、じきにおとなしくなった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
沈黙が続く中、周囲では誰も殺してはいけない戦いが繰り広げられる。
こっちは殺さずを貫いているが、相手は間違いなくわたくし達を殺す気だ。その思いの違いが、わたくし達を不利にしていた。
そんなとき…
一陣の風が戦場を駆け抜ける。
風が駆け抜けたところは敵兵が倒れている。それをやった人はわたくし達の遥か後方にいた。
「…エドワードさん…」
ロビンが誰よりも早くその存在を認識する。