Legend2
□第3話 強者
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初仕事から数日。髪を染めたおかげなのか、連中も私を私と気付かなかった。また、あの日以来、店に入ってくるという事もなくなっていた。
「リュ〜イ〜ちゃん♪」
「ちゃんって呼ぶな。」
仕事中、バイト先にヘインが現れる。私は抱きつこうとしたヘインを睨み、物凄く低い声で彼を制した。ヘインは両手を広げたまま固まっている。
ヘインに私がここで働き始めたことが気付かれたのは、初仕事の次の日の事だ。バイトが終わり、外に行くと、ユリウスが待っていた。彼と一緒にヘインもいたのだ。その日から、ヘインは毎日のようにこの店に来ては私の邪魔をする。
「何か手伝おうか?」
「結構です。今日は稽古の日ではなかったのですか?」
ヘインの申し出を軽く断り、私は問いかける。ヘインはそっぽを向いてこの問いには曖昧な返事をした。サボッてきたな…。と思いながら溜め息を吐く。そうこうしているうちに、ユリウスが入ってきた。
「ゲッ……」
「やっぱりここに居やがったか!ヘイン!」
ユリウスはヘインを犬猫のように持ち、怖い顔して言う。ヘインは必死で抵抗していた。ヘインは何とかユリウスを振り払うと、彼の心理を読んでか、私の後ろに隠れた。
「なっ…てめっ…」
「ヘイン。見てわかりませんか?仕事中です。放れください。」
ユリウスが何かを怒鳴る前に、私は視線だけで後ろを見てヘインを睨む。ヘインは私に「冷たい。」と訴えだした。私は溜め息を吐き、彼の前に人差し指を向け、「こうしましょう。」と一つ提案する。
「もし、あなたがあなたの憧れのラッセル=ヒューマーの実力に同等、もしくは限りなく近付いたなら、それなりの相手はいたしましょう。どうですか?」
満面の笑みでそれだけを言うと、ヘインはやる気を出した。連れ戻しに来たはずのユリウスを引っ張り、ヘインは店の中からいなくなる。
「…これでやっと静かになりますね…」