Legend2

□第3話 強者
1ページ/10ページ

 初仕事から数日。髪を染めたおかげなのか、連中も私を私と気付かなかった。また、あの日以来、店に入ってくるという事もなくなっていた。

「リュ〜イ〜ちゃん♪」

「ちゃんって呼ぶな。」

 仕事中、バイト先にヘインが現れる。私は抱きつこうとしたヘインを睨み、物凄く低い声で彼を制した。ヘインは両手を広げたまま固まっている。
 ヘインに私がここで働き始めたことが気付かれたのは、初仕事の次の日の事だ。バイトが終わり、外に行くと、ユリウスが待っていた。彼と一緒にヘインもいたのだ。その日から、ヘインは毎日のようにこの店に来ては私の邪魔をする。

「何か手伝おうか?」

「結構です。今日は稽古の日ではなかったのですか?」

 ヘインの申し出を軽く断り、私は問いかける。ヘインはそっぽを向いてこの問いには曖昧な返事をした。サボッてきたな…。と思いながら溜め息を吐く。そうこうしているうちに、ユリウスが入ってきた。

「ゲッ……」

「やっぱりここに居やがったか!ヘイン!」

 ユリウスはヘインを犬猫のように持ち、怖い顔して言う。ヘインは必死で抵抗していた。ヘインは何とかユリウスを振り払うと、彼の心理を読んでか、私の後ろに隠れた。

「なっ…てめっ…」

「ヘイン。見てわかりませんか?仕事中です。放れください。」

 ユリウスが何かを怒鳴る前に、私は視線だけで後ろを見てヘインを睨む。ヘインは私に「冷たい。」と訴えだした。私は溜め息を吐き、彼の前に人差し指を向け、「こうしましょう。」と一つ提案する。

「もし、あなたがあなたの憧れのラッセル=ヒューマーの実力に同等、もしくは限りなく近付いたなら、それなりの相手はいたしましょう。どうですか?」

 満面の笑みでそれだけを言うと、ヘインはやる気を出した。連れ戻しに来たはずのユリウスを引っ張り、ヘインは店の中からいなくなる。

「…これでやっと静かになりますね…」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ