Legend

□第六章 精霊
2ページ/44ページ

 ラッセルが陸に上がると、今後の方針を考える。二人で意見を出しあい、里に詳しい人を探して行動する。

「…リヒャルド…目覚めたかな?」

 ルミナはサウザニア方面を見て呟く。ラッセル達は足を止め、彼女の視線の先を見る。しばしの沈黙。

「…行く宛もねぇし…行ってみるか?」

「そうですわね…。彼の性格上、術の失敗を自分のせいにしていそうですわ…」

 ラッセル達は少し休んで、サウザニアに向かった。



‡‡‡



「………………………」

 目が覚めれば、いつもの光景が広がっていた。いつもの部屋。いつもと同じ窓から、日の光が差し込んでいる。
 部屋の中を見渡すと、術に失敗したことを改めて認識。彼女の甲高い笑い声が、頭の中で響いている。耳を塞いでも、その声は聞こえ続けた。
 生きていることがうれしいはずなのに、使命を果たせなかったことが非常に悲しく、悔しかった。

コンッコンッ………。

 不意に部屋の戸を叩く音が聞こえた。リヒャルドは面を上げ、戸の先の人物を待った。
 戸を開けて入って来たのはユリウス。彼はこっちと目が合うと、一瞬表情が明るくなった。だが、その表情からすぐに怒りの色が伺えた。

「…目を覚まされたのですね?ルーシア様がお喜びになります。」

 ユリウスは声のトーンを下げていった。その声色から、彼が怒っていることが悟られる。ユリウスはゆっくりとこっちに向かって歩いて来る。リヒャルドは体を硬直させ、怒られてもいいように身構えた。

「………………………」

 ユリウスはリヒャルドの前に立つと、静かに息を吐いた。リヒャルドは首を傾げ、彼を見上げる。身構えることを忘れていた。

「…陛下は…ラッセルやミッシェルだけを信頼なさっているのですか?」

 ユリウスの言葉は訳がわからなかった。「そんなことはない。」と言うと、ユリウスは「そうなんだろ?」と声を荒げる。

「あの二人は知っていた。あの術を使えばどう言う結果が起こるか…。他国の者に話せることを…何で自国の者に話さないんだ?それこそが…あの二人以外を信頼していない証拠だろ!」

「………………………」

 ユリウスはものすごく怒っていた。別に信頼していない訳じゃない。話さない方がいいと思っただけだった。

「…黙っていたことは謝ります。申し訳ありません。ただ、知らない方が…」

「突然死なれた方が…悲しいことを知ってるか?」

 リヒャルドの言葉をユリウスは遮った。リヒャルドは首を傾げる。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ