Legend
□第六章 精霊
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ラッセルが陸に上がると、今後の方針を考える。二人で意見を出しあい、里に詳しい人を探して行動する。
「…リヒャルド…目覚めたかな?」
ルミナはサウザニア方面を見て呟く。ラッセル達は足を止め、彼女の視線の先を見る。しばしの沈黙。
「…行く宛もねぇし…行ってみるか?」
「そうですわね…。彼の性格上、術の失敗を自分のせいにしていそうですわ…」
ラッセル達は少し休んで、サウザニアに向かった。
‡‡‡
「………………………」
目が覚めれば、いつもの光景が広がっていた。いつもの部屋。いつもと同じ窓から、日の光が差し込んでいる。
部屋の中を見渡すと、術に失敗したことを改めて認識。彼女の甲高い笑い声が、頭の中で響いている。耳を塞いでも、その声は聞こえ続けた。
生きていることがうれしいはずなのに、使命を果たせなかったことが非常に悲しく、悔しかった。
コンッコンッ………。
不意に部屋の戸を叩く音が聞こえた。リヒャルドは面を上げ、戸の先の人物を待った。
戸を開けて入って来たのはユリウス。彼はこっちと目が合うと、一瞬表情が明るくなった。だが、その表情からすぐに怒りの色が伺えた。
「…目を覚まされたのですね?ルーシア様がお喜びになります。」
ユリウスは声のトーンを下げていった。その声色から、彼が怒っていることが悟られる。ユリウスはゆっくりとこっちに向かって歩いて来る。リヒャルドは体を硬直させ、怒られてもいいように身構えた。
「………………………」
ユリウスはリヒャルドの前に立つと、静かに息を吐いた。リヒャルドは首を傾げ、彼を見上げる。身構えることを忘れていた。
「…陛下は…ラッセルやミッシェルだけを信頼なさっているのですか?」
ユリウスの言葉は訳がわからなかった。「そんなことはない。」と言うと、ユリウスは「そうなんだろ?」と声を荒げる。
「あの二人は知っていた。あの術を使えばどう言う結果が起こるか…。他国の者に話せることを…何で自国の者に話さないんだ?それこそが…あの二人以外を信頼していない証拠だろ!」
「………………………」
ユリウスはものすごく怒っていた。別に信頼していない訳じゃない。話さない方がいいと思っただけだった。
「…黙っていたことは謝ります。申し訳ありません。ただ、知らない方が…」
「突然死なれた方が…悲しいことを知ってるか?」
リヒャルドの言葉をユリウスは遮った。リヒャルドは首を傾げる。