神の子

□第1章 私の使命
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「…行くぞ。」

「ハイ。」

 将軍の言葉に呼応して、私達は現場に向かった。





 そもそも、今回の任務は地下鉱山に巣くう怪物の退治。そんな任務を、たった2人だけで大丈夫なのか?そんな疑問が浮かぶ。
 これも、陛下の命。何か策でもあるのか、それとも、我々を信頼してのことなのか…。そんなことを思いながら私は将軍に着いて行った。





 地下に行くにしたがって、薄気味悪い声が響いていた。

「…何処から何が飛び出すか分からないからな…気を付けろよ。」

「ハッ。」

 私は将軍に続いて武器を構えた。将軍の武器は二刀流。私は弓。
 こっちが武器を構えると、四方八方から怪物が飛び出して来た。

「まさかこんなに居ようとは…久々に暴れるか…行くぞ!」

「ハッ!」

 将軍の声に私が呼応する。そして、戦闘が始まった。





 しばらくの間、私達は地道に敵を倒していた。

 しかし…

「…きりがないですよ!このままじゃ…」

 私は微妙に息を切らして将軍に訴えかけた。

「…仕方がない…アリス!ここは任せたぞ!」

「クルストファー様?!」

「…俺は敵の頭を叩きに行く!!」

 そう言って将軍は坑道の奥へと行ってしまった。私は将軍を見送って、何千何百と言う敵を相手に戦った。





 しばらくの間、私は苦しい戦局を余儀なくれた。だが、敵の数が減り、気が付けば誰もいなかった。

「‥‥ハァハァ‥‥やっと終わった…。…もう居ないよね?」

 そう言うと、私はその場で倒れ、動けなくなった。
 私は生つき、肺の病にかかっていた。だから、戦闘を長時間続けていると、発作が止まらなくなる。そんなんで軍人が務まるのかと言われたら、答えられないのだが、私が動けるうちに、貯えを貯めなくてはならない。
  小さいころ、父親を亡くし、母親も"やることがある"と言って、家を飛び出した。だから、幼い妹の為に私は戦っていた。

「クリストファー…様の所…い・か…な・い・と…」

 私の寿命は人より短い。その事は将軍も知らない。だから余計に言いたくもない。

 これは、将軍に対する唯一の隠し事だった。

「…これくらいで…この様とは…」

 小声でそんなことを言っていると、将軍が戻って来た。

「クリストファー様!…そちらも終わっていらしたのですね。」

「…あぁ。お前も無事だったか…」

 互いで無事を確認した後、私達は少し坑道を巡回してから帝都に戻った。
 帝都に戻ると、私は休暇をもらい、久々に家に帰ることにした。





 家に帰った私は、任務先でもらった結晶を眺めていた。結晶は少し輝いて見えた。

「…お姉様?何していらっしゃるの?」

 不意に、私の後ろから声が聞こえた。その声は私のたった1人の妹、クルミの声だった。

「…これ、産まれそうだなって…」

「‥‥‥なんでしょう?」

 クルミは私と違う。だから使い魔と言う存在を知らない。

「えっと‥‥‥‥‥従者…みたいな存在が眠っているもの…って言ったら分かる?」

「‥‥‥‥ハイ。何となくですが…」

 私が『本の虫』と言うならば、クルミは『本依存症』なのかも知れない。姉妹揃って…と思われるかも知れないが、私達姉妹は根っからの貴族育ち。
 クルミに関すれば、現在進行形で病気の為、医者から外出を制限されている(私は酷くなってからは病院にすら行っていない)。だからクルミが本に依存するのは仕方ないと思っていたりする。
 私が家に帰ったのが夜遅かった為、私達はそれぞれの部屋に戻って、床についた。





「おっはよ〜ございま〜す♪あっさでっすよ〜♪」

 次の日、私は耳元で聞こえたうるさい声で目が覚めた。

「やっと起きましたね〜。もう皆さん起きていらっしゃいますよ〜」

「‥‥‥‥‥‥」

 目の前をくるくると回っている小さな生き物に私は半分睨んでいた。
 うるさいなぁ。これが使い魔なの?ちょっと(てか、かなり)ショックかも…。おとなしい子想像してたのにぃ。などと考える。

「マスター。これから、よろしくお願いしますね♪」

私の気も知らず、使い魔は笑顔でそう言った。

「…名前、考えなきゃね?」

 私は立ち上がって、髪を解かしながら考えていた。と言うよりも、結晶をもらった瞬間から考えていたのだが、言い出しにくいだけだった。
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