神の子
□第1章 私の使命
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「‥‥‥‥」
私は考えているふりをして、どうしようか悩んでいた。
もう一度考え直すの面倒だしなぁ…いいや別に。恥ずかしい名前じゃないと思う!
私は意を決して用意していた名前を口にした。
「ディーナ…って名前…だめ?」
不評だったらどうしようかとか思っていた。使い魔は私が言った名前を復唱する。
「…ハイ。今日から私はディーナです。」
それから数週間…私はディーナと一緒にいた。彼女が産まれた当初は、クルミが大パニックに陥って、落ち着かせるのが苦労した。城に戻っても、彼女によって引き起こされた騒動はきっと語りきれない。
要するに、彼女は超問題児だった。
ただ、ディーナは私のことを知りながら、何も触れない。その事だけがちょっとした救いになった。それに、一緒にいて、楽しかったことも沢山あり、本当に久しぶりに笑った気がした。
私にとって、ディーナが頼りだった。彼女だけが私を理解してくれている気がしてた。
ある日、私は自分の母親から呼び出され、家に帰っていた。
何の用だろう?突然帰って来たと思ったら突然の呼び出し…。急用なのは分かるんだけど…。私はいろいろなことを考えながら歩いていた。
家に着くと、クルミは私に飛び付いた。よく見ると、彼女は泣いていた。
「やっと帰って来たわね…」
「‥‥‥お母様。」
しばらくすると、母は奥の部屋から出てきた。談話室で、母はゆっくりと語り始めた。
その内容は…私を漆黒の闇の中に突き落とす結果になった。
クルミが泣いていた理由につながるその内容は『貴女は私の本当の娘じゃないの。』ということ。
14年前に森で捨てられていた私を…当時、子どもに恵まれなかった夫婦が、育てることにした。その時、私がもっていたのが"陽のペンダント"。それだけが私の素性を現すものだった。
私は"本当の娘じゃない"と言うことがかなりショックが大きかった。信じていた物に裏切られた気分だった。
「‥‥‥‥‥っ」
「あっ…マスター!」
私は談話室を飛び出して自分の部屋の中に駆け込んだ。
「私は‥‥‥わたし‥‥は‥‥‥‥‥」
私は部屋にこもってなき続けた。
「‥‥‥‥」
母に首から掛けられたペンダントは微かに輝いて見えた。まるで、今の私を慰めてくれているかのように…。
バシィィ!
私はペンダントを壁に叩きつけた。ある意味の八つ当たり。
「‥‥‥お姉様?」
不意に、戸口からクルミの声が聞こえた。クルミは部屋の外から何度も私の名前を呼ぶ。私はその声に応えることはなかった。
しばらくすると、クルミは何も言わなくなった。静かな時間だけが流れてく。私は何もする気がおきないまま、城に戻って仕事をした。
「‥‥‥アリス‥‥‥」
城に行くと、将軍が背後に立っていた。彼は私が少し変だと言うことを察したみたいだ。
「何かあったのか?」
「…特に…何も…」
将軍は私のことを心配していた。だけど、今の私には有り難迷惑だったりする。
「…失礼します。」
そう言って、私は自分の訓練場へ向かった。
訓練を始めて少しして、ようやくディーナが居ないことに気が付いた。
何処かに忘れてきたか、勝手に離れたか…。どっちにしろ、考える脳を持っているから、いつかは帰るだろう。
今の私はその程度にしか思えなかった。
その日の夕方、城の私室に戻ると、机の上にディーナが座っていた。
「…あっ…」
ディーナは私に気付くと、腰を浮かせた。そして、私に何かを差し出した。
「…ハイ。これはマスターの大切なものですよね?」
「‥‥‥‥」
にっこりと微笑みながら差し出したものは、私が投げつけたあのペンダントだった。
「…そんなもの…要らない。」
私はディーナが持って来てくれたペンダントをゴミ箱に捨てた。
「…マスター…」
ディーナは悲しそうな顔をしていた。私室に居るのも嫌になった私は、ディーナを置いていつもの場所に向かった。