神の子

□第3章 陰のペンダント
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 色々なことを思いながら、私はベットから上体を起こして、頭を抱えていた。

「お姉様…朝ですよ…」

 戸口からクルミの声が聞こえて、私は立ち上がった。

「…おはよう。クルミ…」

「おはようございます。お姉様。」

 挨拶を交わして二人で朝食を食べた。

「ジュレイス将軍!」

 唐突に城の兵士が飛び込んで来た。

「…どうした?」

「ハッ…陛下がケニー将軍を捜して、潜入調査をしてこいと…」

「潜入調査?」

 私は兵士が差し出した書類を受け取り、中を拝見した。サラケス地方に三国の大きな国ができ、そこの徹底調査が任務だった。
 ただ、サラケス地方に住める大地は存在しないはず…そこが大きな謎なのかもしれない。

「…見習い騎士のロビン・カーソンも…この任に就きます。彼女は先にケニー将軍を捜しているはずです。」

「…そう…わかった。」

 立ち去る兵士を見送って、私は彼らを捜しに向かった。





 ロビンに関してはさほど捜すまでもなく見つけることができた。問題なのはクリストファー様の方…。
 彼は昨日、突然姿を消したらしい。

「…でも…誰にも何も言わないまま…姿を消すような人だった?」

 私はロビンに問いてみた。

「…私の知る限りでは…そのようなことをする方ではなかったかと…」

 ロビンも首を傾げて私の質問に応えた。

「…もしかして…」

「…ジュレイス将軍?どちらへ?」

「あの丘…彼が好きだった場所…もしかしたらってね…」

 私は小走りになりながら早口で要点だけを口にする。そして向かった場所は…ジャハンナ帝国全土を見渡せる丘。

 そこに彼は居た…

「クリストファー様!!」

 私は彼の姿が見えると彼の名前を叫んだ。彼はゆっくりとこっちを振り返り、「なんだ騒々しい」とでも言いたげな顔をした。

「…やっぱりここにいらしたのですね?」

 満辺の笑みで言った言葉をクリストファー様は敢えて無視したのがわかった。

「‥‥‥‥‥」

 私は彼のその行動が感に触り、彼の頬を軽くつねった。

「…ジュレイス…将軍?
それは命知らずなのでは…」

 私の後からついて来ていたロビンは青い顔して問いていた。

「…今…敢えて無視しましたね?こっちがどれだけ捜したとお思いですか?…本気で心配したのですよ…」

「…アリス…?」

 本当に彼がどこかに行ってしまって、二度と私の前に帰って来てくれないのでは…と言うことを考えていた為、本気で涙を流していた。クリストファー様は何が何だかわからないような顔をして、ちょっと焦っていた。

「…あ…え…っと…?」

 今思えば、焦る彼を見るのは初めてかもしれない…。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 これ以上彼を焦らせておくのは可哀想な気がして、自力で涙を止め、再び彼を睨んでいた。

「‥‥‥うぅ‥‥‥‥」

 しばらく涙を止めることはできたが、彼を見ているとまた涙がこぼれた。クリストファー様は私の涙を拭おうとしていたが、私はその手を振り払っていた。

「…もう…何も言わないまま…どこかに消えないで下さい…」

「…わかった。だからもう泣くな…」

 その後しばらくの間私は泣いていた。

「…お取り込み中申し訳ありなせん。」

 唐突に背後からロビンの声が聞こえて、私達は驚いていた。彼女がついて来ていたことを完全に忘れていたからだ。彼女は無表情のまま、言葉を続ける。

「…ケニー将軍。私達とサラケスへの潜入調査の任を承りました。ご同行願います。」

「…わかった。」

 そして、クリストファー様を連れ、私達はサラケス地方に向かった。





「…これは…」

 私達は現在封鎖されているサラケスに向かう為に、その地方の管理を任されている町の領主に会っていた。そこで、異変が起こった後のサラケスを撮影した映像を見せられ、私達は言葉を失った。
 本来のサラケスはある事件を境に出た餓死者の遺体が山のように積まれていたはずだが、その映像には、その遺体がなく、不毛の荒れ地だったサラケスに大森林が広がっていた。

「…これが…今のサラケス…」
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