神の子

□第4章 避けられぬ戦い
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 あの拷問が夢だったのか…そんなことを考えていた。

「‥‥‥っ‥‥‥」

 考えているうちに、金属と摩擦が起こったのか、体が異常に痛かった。よく見れば、身体中が傷だらけで、口の中には血の味が充満していた。

―‥‥‥‥‥か‥‥‥‥‥‥‥す‥‥‥―

 あぁ、どっちも夢じゃないんだ…と思った矢先、背後から声が聞こえた。その声は今にも消えてしまいそうな小さな声で、誰の声なのか判断出来なかった。
 一つだけ…その声は私に語りかけてることはよくわかった。わかったのはそれだけだ…。

「…心配してくれて有り難う。でも、もう大丈夫だから…」

 私は声の主に話しかけた。誰かは知らないけど、なんだか懐かしい気がした声だった。





 数日後、再び視界が開けた。今回は初回と違い、慌ただしい。何があったのか…状況の確認をする前に、二つの影が私の前に膝をついた。

「‥‥お姉様‥‥」

 影の一方からクルミの声が聞こえた。徐々に目が慣れて、改めて周りを見ると、影の正体はクルミとロビンだった。

「…どうして…ここに…」

「決まっているじゃないですか…助けに来たのです…」

 私の問いにロビンが応えた。二人で鎖などを私からとり、私は再び自由の身になった。

「…早くここから脱出しませんと…」

 鎖がとかれ、自由の身になると、クルミが急かすような声をあげた。

―…よかったな…二度と捕まるなよ…―

「‥‥‥‥‥‥‥?」
 
  あの夜と同じ声。振り返って見ると、大きな水晶盤があった。
 その中に誰かが入っていて…その人は…。

「…アリス様!!」

 ロビンの声で思考を遮った。前を向き直ると、敵国の兵士が壁を作り、その中央に奴がいた。

「…逃げられると思うなよ?…三人まとめて捕まえろ」

 奴がそう言った瞬間、クルミとロビンは戦闘態勢に入った。

「…もう二度と捕まらない…ロビン…」

 私はロビンに手を差し出した。ロビンは一瞬の間があったが、自分のポケットからペンダントを差し出した。

「…二人だけだよね?」

「ハイ。わたくしとロビン様だけです。」

「…時間稼ぎ、お願いね…」

「ハイ!!」

 私の言葉に二人が呼応する。そして、私は詠唱を始めた。

「‥時と空間を司る聖なる風よ、神々なる力を用いて我は求め訴えん‥。テレポート‥」

 私は二人を連れてテレポートで前線基地まで戻った。





 前線基地では、ピリピリとした異様な空気に包まれ、兵士の様子がおかしかった。

「…ロビン?」

 私はロビンに状況の確認を求めた。
 
「‥‥‥実は‥‥‥」

 ロビンはものすごく言いにくそうに語り始めた。

「…先日、アルカパ王国が裏切って…我々に攻撃してきたのです…。…スレイさんとハヤトさんに指示を出していただき、何とか今までもちましたが…完全に…我が軍が孤立してしまいました…」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 私は言葉を失ってしまっていた。援軍も、物質の補給も期待できない状況下で、三国の相手ができるとは思えなかった。

「…ここで敗けを認めれば、私達はみんな捕虜にされる…それだけは避けたい…。…みんな…もう少し頑張れる?」

 私はみんなに問いかけた。みんなは私の問いに頷いてくれた。

「…有り難う。」

 その後は今後の方針を決める為、作戦会議を開いた。
  会議の結果、私達は行動範囲を広げるため、ヴァルキサス、ファーメリアの両軍を一斉に攻め込むことになった。

「…部隊の編成はこんな感じ…」

 私は部隊の編成内容を示した紙を皆に見せながら作戦の説明をした。

「…で…攻め込む際に危険なのがここに兵を残せないこと…。…そこで…スレイ、ハヤト、スーザン、ケティ、ライラ、クルミにはここに残って私が戻るまで、ここを守って欲しい…」

「…ずいぶん大変なことを押し付けるね…」

「でも頑張りましょう?
ケティちゃん。」

 クルミの言葉にケティは「当たり前よ」と言っていた。

「ファーメリア方面は私が指揮をとる。ヴァルキサス方面は任せたわよ?ロビン?」
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