神の子

□第6章 終わりなき戦い
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 皆の所に戻って、次の行動の指針を決める。

「…アリス様…アリス様にお会いしたいと言う方が…」

 話がまとまらず、あれやこれやと言いあっていると、ユニが私を呼んだ。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 私は無言でユニが案内した所に向かう。





「‥‥‥‥エドワード‥‥‥」

 案内された先で、エドワードがたった一人で立っていた。

「…よぅ。久しぶり。」

 そう言って私に話しかけた。私は警戒して身構える。

「…何もしないよ。ただ話がしたかっただけ。」

 エドワードは両手を上げ、敵意がないことを意思表示していた。

「…何の用ですか?」

「…取られたんだ。何もかも…全部…」

「はぁ?」

 突然『取られたんだ』と言われても訳が分からなかった。

「…あいつに…俺の大事なものを…奪われた…
…国も…家族も…力も…」

「…力?」

「…俺、勘が良いって言ったよな?あれは…嘘なんだ。自然が教えてくれたことなんだ…。…俺にわからないことはない…自然の声を聞くことが…俺の能力。…それを…ミハエルが奪った。」

 私は彼の言葉を信頼していいのか不安だった。取り敢えず話は聞いたが、信じるかは別のはなし…。

「…信じないならそれでもいい…ただ、俺はお前に協力する。時が来たら…また来るよ…」

 そう言い残し、エドワードはどこかに行ってしまった。彼を見送り、中に入ると、皆先の話を聞いていて、エドワードのことを信頼するのか等を問われた。

「…まだわからないけど、彼は人を騙す人ではないと思うし…信じていいんじゃないかなぁ?」

私がそう言うと、皆納得してくれた。

「…やっぱり、退路は確保した方がいいよね?ヴァルキサスもファーメリアも将軍クラスを失ってるけど、二面戦争は終わらせなきゃ…」

 そう言って、ヴァルキサスに攻め入る準備を進めた。





 ヴァルキサスの首都まで簡単に攻め入れて、首都には多くの操られた兵士がいた。その中にはエドワードの弟の姿もあった。

「…まさか、主力部隊が皆裏切るとはな…。…神子の一人を殺したと言うのに…ペンダントは持ち去られるし…とんだ災難が続く…」

 ヴァルキサスの軍勢の中から、ミハエルが姿を表す。

「…兄の仇は…打たせてもらうぞ…」

 私は兵士に大まかな指示だけを出して、詠唱を始める。

「…汝の悪しき力、我が聖の力をもって今ここに封じん。我、光の継承者なり…マジック・アウト」

 "光のペンダント"を持つ者は"光の継承者"。"影のペンダント"を持つ者は"影の継承者"。
 光は影を封じ、その力を使えなくさせる。たから、クリストファー様の力を利用したミハエルは影。私には敵わなかった。

「…これで、テレポートは使えない。覚悟しろ…貴様はここで殺してやる!」

 私は武器を構え、ミハエルに攻撃した。ミハエル自身が直接攻撃を苦手とするため、奴の攻撃は私に届かない。
 しばらくの激闘の末、ミハエルはヴァルキサスの兵士全員を連れ逃げてしまった。

「…兵士を根こそぎ持って行った…」

 呆気にとられ、私達はしばらく動けなかった。

「…アリス様…」

 ヴァルキサスと帝国を繋ぐ森の方から数人の兵士が駆け込んで来た。

「…まさか、首都を落としているとは…。突然、敵軍がいなくなったので調査に参りました。」

 兵士は口早にそれだけを言って敬礼をする。

「…なお、森の向こうには援軍に向かう兵士が集っております。何なりとお申し付け下さい。…では、私は彼らを連れて参ります。」

「…ありがと。」

 森の奥へと向かう兵士を見送って、私は事後処理をした。





 その後、私達は砦に戻ってファーメリア方面の戦いに備えていた。
 夜。私は一人、部屋で考え込んでいた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 もう少しで何かを思い出せそう…小さい頃の記憶。私が暴走した時の記憶。あれは確か…父様の仕事について行って、遠くの町まで出かけた時…。
 私は公園で待たされて、一人で遊んでいた。その時話しかけてきた子供たちと友達になって、二、三日一緒に遊んだ。
 帰る時になって、その子たちに別れを告げると…色々言われた。
 色々けなされて、私の中の何かが切れた。
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