神の子

□第7章 終戦の祝福
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「…アリスは…?」

 そう言って現れたのはヴァルキサスの騎士。以前協力すると言ったエドワードだ。

「…先に中に入ったが…出てこない…」

 エドワードの質問にディオスが応える。エドワードは「そうか…」と言うだけで戦いに参加する。

「…お兄ちゃん…」

 突如、わたくしが押さえるオーブの力が緩む。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 やっぱり…とか思いながらわたくしの方が力を入れる。

 やっぱり、この方は以前のわたくしと同じなんだわ…。何かを求めて…一生懸命になって…でもそれが…空回りで…。…プライドだけが高くなって…突っ張って…そんな自分が嫌で嫌で仕方ない…。でも、わたくしは自分の居場所を見つけた。だけど…この方は…?自分の居場所を…見つけたの?

 だんだん、クロス自身が可哀想に思えてならなくなっていた。

「…クロス様?…あなたは…ご自分のなさっていることに責任を持てますでしょうか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 わたくしが問いたことにクロスは黙って俯くだけだった。

「…責任を持てないことはやらない…。…わたくしのお姉様がいつもそうおっしゃってましたわ…」

「…だからなんだ…僕が今戦わない理由にはならない…」

「いいえ。貴方はご自分がとる行動に迷いがある…」

 わたくしの言葉にクロスは反発してきた。迷っていることは認めたくないようだ。

「僕のどこに迷いがあるって言うんだよ!」

「じやあ、なぜエドワード様がいらしたら悲しい顔をしたのです?」

「…それは…」

「貴方が迷っている証拠でしょ?違いますか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 わたくしの言葉にクロスは動揺する。そもそも、わたくしが彼一人に執着してしていいのだろうか?と言う疑問を抱いたときには結構遅かったりもする…。

「…迷いがないと言うのなら…わたくし何か簡単に振り払えますよね?」

「…うるさい!黙れぇぇ!!」

 そう言ってクロスは暴れた。流石に、13年も引きこもりやってると、やっぱり簡単に振り払われた(好きで引きこもってたわけじゃないけど…)。

「…僕は…一人でも戦える!!」

 わたくしを振り払った後、クロスは魔法の詠唱を初めた。

「!…クロス!やめろ!」

「…みんな…消えてなくなれぇ!!」

 エドワードの制止の言葉を聞かないで、クロスは史上最強、太古の魔法を放った。

「…メテオ!」

 クロスのその言葉で、天の彼方より無数の大きな隕石が落下してくる…。

「…我が聖なる力、聖の女神の名のもとに我らにその加護を与えん…マジックシェル…」

 あの方達ならば、いちいちこんな質面倒な詠唱を唱えなくても、防護壁ぐらい簡単に作れるだろう。だけど、わたくしにはそんな力がないためにこの魔法を発動させた。

「…数千年前の戦争時代…最強の魔法『メテオ』に対抗すべく編み出された魔法『マジックシェル』…それはすべての魔法効果を無にする。よって、この先魔法は一切使えない…わたくしも…貴方も…みんな…」

「…マジックシェルの効果は短い…効果が切れれば…魔法が使える…」

「…いつ切れるかわからないものを期待するのですか?その前に殺られてしまうことを心配なさいな?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 わたくしの一言でクロスは周囲を警戒する。既に周りは皆気を失っていて、残ったのはクロスだけ…。

「…クロス…」

 エドワードがクロスに近づこうとしたとき、彼の警戒心がマックスになり、後ずさる。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「…エドワード様…ここはわたくしにお任せを…。…皆様は早くお姉様のところに…」

 そう言って、みんなを中へと急かす。なんだか、さっきから嫌な予感と言うのを感じるからだ。もし、彼女の身に何かあったら…。

「…クルミ一人を置いては行けないわ!」

「…お願い…ケティちゃん…わたくし、お姉様が心配なの…」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 それでも、みんな先に行こうとしなかった。

「…行ってください!行って、お姉様を助けてあげて下さい!…きっとあの方は苦しんでる…だから…」

 わたくしは彼女が飛び込んだ窓を見ていた。

 どうして顔を出さないの?何があったの?お姉様…。

 そう言う不安だけが募って、黙ってはいられなかった。
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