2周年記念企画

□誕生日に愛を込めて
1ページ/2ページ





誕生日にはを込めて





「今日は何の日ー?」


「真田の旦那の誕生日ー」




 やる気のない独眼竜(というか、教室内でエロ本は自重して欲しい)に、律儀な俺様はちゃんと答えてやる。

 あー、なんて優しい俺様。

 独眼竜と来たら、さっきからずっと同じことばかり言ってきて、俺はそれに全部返事を返しているのだ。

 今この瞬間、俺よりも律儀な人はそういないね。




「Shit!すっかり忘れてたぜ……」


「てか、アンタってちゃんとプレゼントとか用意する人だったんだね」


「Ah?当たり前だろ」




 そういうと、旦那はエロ本を閉じて、ニヤリとまさに極悪人面で笑った後




「俺のBirthdayPresentで倍返しさせるんだからな」




 さも当然と言わんばかりのその言い草に、俺はぽかんと、言葉どころか表情すら忘れて、

 思わずくわえていたチュッパの残骸(つまりはただの棒)を落とした。



 あー、やっぱり前から思ってたというか知っていたけど、やっぱりアンタはあれだよ、まじジャイアン。




「なんていうか、あれだよね……アンタってホント逞しいわ……」


「Ha!褒め言葉として受け取っとくぜ」


「で、結局どーすんの」


「そうだなぁ、……よし」


「ん?」


「このエロ本で」


「ちょ!真田の旦那にそういうの渡すの止めてくれる!?てゆーかそれアンタのお古じゃん!!」




 せめて新品渡せよ!




「チッ、過保護め……」


「何とでも。後で迷惑被るの俺様なんだから」


「仕方ねぇ、なんか別の思い付いたらそっちにしてやる」


「ったく……」




 油断も隙もありゃしない……。




「……あ」


「Ah?」


「うわ、もうこんな時間!」




 ケータイで時間を確認して、俺は慌てて鞄を持ちながら、席を立つ。

 独眼竜が目を丸くして驚いてたけど、知ったこっちゃない。

 少しのんびりとしすぎた!




「やば…っ、タイムサービスッ」


「……誕生日ぐらい普通に買ってやれよ」


「うちの旦那の消費量は半端ないの!」




 普通に買ってたら、うちのエンゲル係数とんでもないっつー話ね。

 廊下を走ったら浅井の旦那にキレられたけど、ごめん今日は見逃して…ッ



 今日は上白糖98円!














  * * *















「はぁ…ホント俺様ってば買い物上手……いつでもお婿行けちゃうわ、はは……」




 結果から言えば、タイムサービスに間に合って。

 ついでに顔見知りの店員からちょっとしたサービスも貰って、まぁ大満足なものだと言っていいだろう。

 ただ、会計の時におばちゃんに「もう、佐助さんうちに嫁いで欲しいわ」なんて言われちゃ、

 男としては悲しいやら空しいやら。




「……ま、今日は仕方ないっか」




 なんてったって、旦那の誕生日だからね。 今日ぐらい、アンタの大好物だらけの食卓にしてあげる。



「今帰ったぞ、佐助!」


「はいはい、おかえり旦那手は洗った?」


「う…む…洗ったが………佐助、『手は洗った』が語尾のようになってたのは、俺の気のせいだろうか……」


「気のせいじゃない?」


「うむ……」


「あー、風呂沸いてるから、先入っちゃって。上がる頃にはご飯出来てるから」


「承知した!」




 といっても、旦那は烏の行水だろうから、早く作らなきゃね。



 炒め物の味付けをして、最後の一炒めした後、お皿によそって食卓に置けば完璧。

 冷蔵庫から麦茶を出し二つのコップに注いでいれば、やはり烏の行水だった旦那がさっぱりした状態で戻ってきた。




「おぉ、美味そうだな!」


「腕によりをかけて作りましたから?」


「うむ、感謝しておるぞ佐助!」


「さて、んじゃ温かい内に食べちゃって」


「では、頂戴いたす!」




 それから、食卓一杯に並んだおかずが無くなるのに、そう時間はかからなかった。

 うん、こんだけ綺麗に平らげてもらえると、作った甲斐があるってなもんだね。




「頂きました」


「はい、お粗末様でした」




 行儀よく手を合わせてご馳走様する旦那のタイミングに合わせて、俺は席を立ちプレゼントを持ってくる。




「はい、旦那」


「ん?」


「誕生日おめでとう」


「おぉ、すまぬな!」




 渡したのは、たまたま見つけた、旦那に似合いそうなシルバーアクセ。

 旦那はこういったの、自分では買わないけど、あればちゃんと使ってくれるからね。




「シンプルなチェーンネックレスだけど、結構何にでも合わせやすいかと思ってさ」


「そうだな。見た目よりも重くない故、付けていても疲れそうにない」




 実際につけて、つけ心地を確かめる旦那は、どうやら大分満足してもらえたようだ。

 さて、では最後のプレゼントといきますか。




「んで、もう一つプレゼント」


「ん?」


「はい、バースデーケーキトリプルver」


「おぉ!ホントに作ってくれたのか!!」


「苦労したんだぜ?ちゃんと味わって食べてくれよ?」


「うむ!」




 ケーキは何がいいと尋ねれば3種類のケーキが食べたいと言うから、作ったのがバースデーケーキトリプルver。

 ショートケーキにガト−ショコラ、チーズケーキ。

 一個一個小さめにわざわざ作ったバースデーケーキは、さっき上げたネックレス以上に喜ばれて




「(やっぱり、旦那は花より団子か)」




 と、思わず笑ってしまったのに、ケーキに夢中な旦那は当然気づくことはなかった。




「佐助!」


「はいはい?」


「来年は団子ケーキを頼む!」


「……は?」


「団子でケーキを作ってみてくれ」


「……無茶言うなって」




 あぁ、なのに来年の今頃、台所で一人団子と格闘している自分が容易に思い浮かべられてしまって。

 ホント、旦那の願い事に弱い自分に苦笑しか出来やしない。

 それでも




「美味い!さすがは佐助だ!」




 こうして馬鹿みたいに幸せそうに笑ってくれるなら、いくらでも作ってあげようじゃないの。



 来年の今日も、旦那が幸せそうに笑っていればいいと、思ってる俺様は相当旦那が好きすぎだと思う。

 なんてね。









 追伸。



「ま、ま、ま……政宗殿ォ!!」


「よぅ、幸村。俺様のBirthdayPresentは気に入ったか?」


「気に入るも何も、なんでござるかこれはッ!!」


「何って、エロ本」


「破廉恥でござるぁぁぁああああ!!!」




 結局、独眼竜の旦那は特にいいプレゼントが思い浮かばず、例のエロ本の新品を贈ったらしい。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ