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□さよならを教えて
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見てしまったそれは、実は初めてではない。
何度も何度も別れようとするも、そのたびにうまくまるめこまれて未だにずるずると付き合っている。
もとから女遊びが激しく、あたしと付き合ったからといって他の女と縁を切るとも思えない。
現に今日だって、知らない女と二人で歩いているのを見た。



そんな彼の部屋には今、あたしだけ。
高校に入って彼こと雅治は一人暮らしを始めた。
あたしは合鍵をもらっていて、たまにこうして勝手にあがりこむのだ。

持ってきた鞄にあたしの物をつめこむ。
あたしがいた痕跡なんてひとつも残らないように。
静かに思い出を辿りながら、静かに涙を溢しながら。
全てを詰め終わると、笑いがこぼれた。
「……ふふっ」
あたしの存在なんて、こんなものか。
目の前にあるものは、あたしが来る前と何らかわりのない部屋だった。
変わったのは、あたしの服が入っていた引き出しが空になった事と、歯ブラシが一本、無くなったこと。

しばらく浸ってから、あたしは雅治の部屋に鍵をかけ、そのままポストに合鍵を入れた。






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久し振りすぎる更新がこれとかまじで申し訳ない
続きがかきたくなりそうなのでそのうちまた書くかもしれません。
静かに部屋を出るヒロインを書きたかったんだ!!

タイトルは親友の一人Yから借りました。さんきゅー!!

20090113 鞘音

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