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□手を振り払った君の、(真っ赤な耳が語ってる)
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数学の授業中雨が降り始めた。部活が無くなるって面では俺的にラッキーなんだが問題は傘もってないっちゅーことじゃ。濡れて帰るしかないんかのう…とため息をもらした瞬間、女神は微笑んだ。昇降口を出て俺が最初に視線を向けたその先に、例の彼女がいた。
傘を忘れたんかのう、手には何も持っておらずずっと空を見上げとるぜよ…これは話しかけるチャンスなんじゃなか…?
気分が高揚する。うは、まじかよ俺ってば恋なんかしちゃったりなんかしていやまさかのぅ、さっき偶然教科書貸してもらっただけでそんなこと、この俺が、ありえん!

「……傘が、無いんか?」

心では否定しといて足はしっかり彼女に向いてた。ちゃっかりやのう俺。
振り向いた彼女は眉間に皺が寄っていて、嫌がられとるんかとちょっと傷ついた。でも俺めげない。

「さっきは教科書ありがとさん」
「……ああ、」

その言葉で俺を思い出したらしく、眉間の皺が解かれた。なんじゃ、さっきの視線は嫌がられとるんじゃなく誰だこいつ的な視線だったんか。いやそれはそれでアレじゃが嫌われてる訳じゃなくてよかった。……って、アレ、俺まさかまじで…

「すまんが部室に置いてきてしもうての、明日でもええか?」

とか言いつつ、しっかりと鞄の中には彼女の教科書。次の機会を作ろうと必死じゃ。

「…あ、うん、いつでもいい」

そういって微笑んだ。うわやばい、だ、抱き締めたい。
そんな感情をなんとか抑えて、頭を撫でるって行為に留めた。髪の毛柔らかいのぅ、さらさらでいい匂いしそ…

「…って、」

乾いた音が響いた。あれ、いま俺手ェ叩かれた?そらそうか、いきなりあんな事したらのぅ。…嫌われたか…?
彼女の様子をうかがうように、ちらり、と視線を向ける、と。

「ごご、ごめんっ…でもっ、いきなりそんなことするからっ!!」

真っ赤に熟れた林檎が居た。

「ぷっ、」

ああ、駄目じゃ我慢できん。
数秒後、俺は腹を抱えて笑い出す。


とりあえず、嫌がられたわけじゃなくてよかったと心から思った。








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ツンデレってなんだっけ…



090802 鞘音




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