犬夜叉

□生と死の合間に
1ページ/4ページ

「犬夜叉」


…………桔梗?

おれに、微笑みかけてるのは、
誰だ――?




「犬夜叉、犬夜叉っ!」
目を開いたその前にあったのは、かごめの顔。
「かごめ……」
「何ぼーっとしてんのよ!」
「あぁ、わりぃ……」
「犬夜叉?」
目の前にあった顔が、かごめで、安心して、そして不安になった。
なんだそれ。自分で自分の感情が分からない。

おれ、は――目の前に、誰がいる事を期待してた?


「……、先行ってるね、早く来なさいよ」
「あ、あぁ」
おれはかごめに曖昧に返事をして、その場に座ったまま何をするわけでもなく。
ただ、ぼーっとしたまま、昔を思い出した。


――――『犬夜叉』


いつか、あんなに優しくおれを呼んだ。
「桔梗」
好きだった。好き、だ。
だけど、

おまえはもういない。



おれは桔梗となら、一緒に死んでも良かったんだ。


だけど、だけど。

今は。
かごめが、いる。
かごめが、好きだ。
おれを呼ぶその声に、あたたかさを感じる、かごめがいたから、今の俺もいる。




おれはかごめと生きていく。





もういない、桔梗。
ゆっくり眠ってくれ、俺のなかで。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ