犬夜叉

□欠けた花
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「殺生丸様ーっ!」
青空の下に元気な声が響く。声の主は笑顔をたたえながら、とてとてっと殺生丸のほうへ走ってきた。
「見て見て!お花だよ、キレイ!」
りんは握っていた手を広げ、その中にある花を殺生丸の目に入りやすいようにかかげて見せた。
「ね?殺生丸様」
そしてまた、にこにこと邪気の無い笑みを浮かべる。
「キレイだからこのお花は殺生丸様にあげる!」
「いらん」
少女の申し出を、殺生丸は表情を変えずに断った。
「えー……」
りんは不満そうに呟き、むっと一瞬唇を尖らせたが、すぐにその表情をすぐにひっこめると再びにこっと笑った。そして、ぎゅっ、と花を殺生丸の手のひらに押しつける。
「じゃあ、殺生丸様あずかってて♪」
殺生丸は、じっと押しつけられた手の中の花を見つめた。りんはそんな殺生丸を見てにこにこしていたが、何かに気付き、いきなり声をあげる。
「あっ、殺生丸様、ごはんどうしよう!ここ畑が無いよ!」
「知らん。自分で何とかしろ」
あいかわらず無表情で淡々とつげる。それがいつもの事なので、りんはそのままう〜ん、と考え込むと、
「はぁい。む〜、どうしよう邪見さまぁ」
と助けを求める先を変え、邪見の方を向いた。
「わしは知らんっっ、その辺の草でも食っとけっっ」
邪見がつばをとばしながら怒鳴るが、りんはおかまいなく。
「邪見様っ、何か探しに行こっ。ついてきて!」
「え!?えぇぇええ、ちょっ、ひきずるな〜〜わしを〜〜っ」
ズルズルと邪見をひきずっていきながらりんは言う。
「だって邪見様おそいんだもん」
「だからわしは行かんと言っておるだろうがぁ、っていたっ!りんっ!こらっ!!石に当たっとるっっ!!」
「あ、ごめん邪見様」
――まったく、何でこんな小娘を殺生丸さまは――
「分からん」
邪見はぼそっとつぶやいた。
「邪何か言った?邪見様」
きょとん、とした顔でりんが問う。邪見はそんなりんの顔をじぃ、と見た後、
「何も言っとらんっっ」
と怒鳴り、そして大きなため息をついた。
そのため息と共に先ほどの自問を考えてみるが、やはりさっぱりだった。
「本当に、分からん……」
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