犬夜叉

□生と死のアイダ ―かごめ―
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「犬夜叉」


あたしが呼んだって、気がつかない。
何よ、ぼーっとしちゃって。
「犬や、」
――ズキンッ――

名前を呼ぼうとして、出来なかった。
犬夜叉の目は、今、何を見てるの――?

その目は、どうしようもなく悲しみを表している。それを向ける相手が、あたしじゃない事くらい、ひとりの人にしか向けない事くらい、知ってる。

「犬夜叉、犬夜叉っ!」
わざと目の前に回りこんで、名前を呼んだ。さすがの犬夜叉も気づく。
「かごめ……」

ああ、ホラ。あたしの事なんか、考えてなかったよね、その言葉。分かっちゃうよ。



あ、まだ、見てるのはあたしじゃないね?

「……、先行ってるね、早く来なさいよ」
桔梗、桔梗、桔梗のことばっかり。死んでしまってから、前より――。
……なにもう、あたし、死んだ人に……サイアクだ。

「はあ」
ため息が、ひとつ。

そりゃ、しょうがないけど。犬夜叉と桔梗は、あたしが犬夜叉と会う、ずーっと前から愛し合ってた。
自分で考えて、ちょっと落ち込んだ。何やってるんだろうな、あたし。
「でも、」
今、あたしは犬夜叉が好きで。
あたしは、今を生きてる。

から。



「かごめっ」
犬夜叉の声。

駆け寄ってきた、犬夜叉の目は。


今その目は、あたしを見てるよね。
――犬夜叉


「おそいわよっ」
「すまねえ」
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