犬夜叉

□信じても良いよね
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「犬夜叉、何処行っちゃったのよ」
犬夜叉ーっと叫びながら、かごめは辺りを見回す。しばらく歩いた先、探していた背中を見つけ、そこに駆け寄ると。
「寝てる」
珍しく寝ている犬夜叉を見たかごめは、思わず笑った。
「こうしてれば可愛いのになぁ」
すうすうと寝息をたてるその顔を見つめる。
つんつん、と頬をつついたら、「んー」と声がした。すぐに、ふわぁ、と犬夜叉の口が開く。あくびをした後、ゆっくりと犬夜叉の目も開いた。
起こしちゃった、悪いかな。と思いながら、顔を覗き込んだとき。

「――桔梗?」
「っ――」
呼ばれた名前に、言葉が出なくなった。
「あ、かごめっ……」
気付いた犬夜叉のその声は、動揺を含んでいた。

分かっている。
自分が、切り離せないほど桔梗と似ているのは、知っている。
きっと、犬夜叉は桔梗の事を忘れてない。それも、知ってる。
また、夢にでも見ていたのかな。それで間違えたんだよね。わざとじゃないのよね、大丈夫。自分は桔梗とは違うから。
――そう、思っても。
少しだけ、心が痛んだ。「間違えないでよね」と怒って言えなかった。

今自分がどんな顔をしてるか分からなくて、そんな顔を見られたくなくて、逃げるように走った。
後ろから犬夜叉が走ってきてるのが分かる。
犬夜叉の方が速いから、追いつかれるのは時間の問題だけど、それでも必死に足を走らせる。
「かごめ!」
あたしの腕を掴んだ犬夜叉の手。そのまま顔を見た犬夜叉の体がびく、と震えた。
泣きそうな顔だから、びっくりしたのかな。
しょうがないじゃない、あんたのせいよ。
嘘。本当はこんな事で、泣きたくない。弱い自分が、情けない。

「違う、」
何がよ。
「桔梗は、まだ、忘れらんねえけど」
その言葉が、痛い。
「まだ、夢に見るけど、」
知ってるわよ、今までも聞いちゃってたから。何度も寝言で桔梗、って呟いてる犬夜叉を。

「でも、違う、お前は、」
目を逸らしていた犬夜叉があたしを見て、
「桔梗の、代わりなんかじゃないから」
はっきりと、そう言った。



「お前が言ってたんだろ」
あたしと桔梗は違うってさ、と付け加えた犬夜叉。

そんなの当たり前。
そうだけど、やっぱり犬夜叉の口から聞きたかった。
知ってたこと。けれど、代わりじゃない、犬夜叉が言ってくれただけで、今までの不安な気持ちが嘘みたいに消えて、代わりに嬉しさが溢れてく。
「おれは、お前が、かごめが、好きだ」
その言葉を、信じても、いいよね?
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