ネウロ

□離れられない
1ページ/2ページ


「桂木」

名前を呼ばれて、振り向く。
振り向いたその先には、いつもの愛しい顔。
「匪口さん!どうしたの?」
「んー?仕事珍しく早く終わったからさ、桂木に会いに行こーと思ったらこんなトコで会っちゃった」
ラッキー、なんて言って楽しそうに笑う匪口さんの顔は、私も笑顔にしてくれる。
「じゃあ、どこか、行きましょうか」
「マジ?桂木からデートの誘いとかすっげぇ嬉しいんだけど」
その顔が本当に嬉しそうで。
あぁ幸せだなぁ、と思う。
「あ、でもメシ関係だけは勘弁して?今、金欠だから」
「もう、毎月給料日前に言わなくったって分かってるよ!お金入ったらたっぷり奢ってもらいますから」
「あ、やっぱり奢りはしなきゃいけないんだ……?」
「もちろん♪」
「ははっ、了解」

何気ない会話をしながら、街をぶらつく。
特別じゃないけど幸せな時間。こういう時は時間が過ぎるのが早いなあ、と実感する。



辺りがオレンジに染まっていく。
日が、落ちてきた。

「そろそろ暗いし……桂木帰る?」
「そう、ですね」
残念だけど、仕方ない。そう思って顔を上げると、そこにはニッコリと笑った匪口さんの顔。
「何、桂木。そんなに俺と離れたくないの?」
ああもう、この人は!
そんなことサラッと口に出さないで。

「あのさ、……桂木そんな顔してると、俺も離れたくなくなる」
貴方こそ。そんな顔して、言わないで下さい。
私、本当に貴方から離れられなくなります。

「あぁ、でも、」
匪口さんの顔が、近づく。
「俺、桂木のこと一生離すつもりないから」
触れた、唇。
「――――っ」

あぁ本当、ズルイ。
そんなこと言われて、離れられるわけない。
きっともう、離れてなんて、あげられない。
ズルイよ、匪口さん。
そうやって、私をずっと、縛り付けるんだね。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ