ネウロ

□「襲います」
1ページ/2ページ


「かっ桂木!!俺ッ!!あけて!」
扉をドンドンと叩く人がいると思っていたら、その後聞こえた何故か切羽詰まった声で、それは匪口さんだと分かった。
「はーい、今開け……え、」
扉を開けた瞬間。
目の前の光景に固まった。何が起きているのか分からない。
「い、入れて……!早くっ、桂木!」
涙目な匪口さんが懇願してくる。
とりあえず、招き入れて、詳しい事はあとだ。


「……匪、口さん。あの、いったい、えっと、」
「……っ罰ゲームなんだよ、これっ」
ぶわっと目に涙を溢れさせんばかりに溜めた匪口さんの格好は、
「セーラー服、ですか……」
「ちょ、若干引いてるでしょ!?違うって、コレ俺が選んだんじゃないし!皆が押し付けたんだし!!つーかもう泣きそうなんだけどっ」
「いやぁ……ははは、それにしても、何で私の家に?」
「苦笑いしないで!俺今打たれ弱いの!!泣くよっ!」
真っ赤な顔で匪口さんが叫んだ。
あまりの羞恥に今の匪口さんは少々情緒不安定のようだ。

「あの、落ち着いて匪口さん。落ち着いて今の状況教えてよ。ね?」
「うぅ……ごめん。恥ずかしくって考える力がちょっと麻痺してる……」
ふー、と息を吐き出す。未だに顔は赤いようだが多少は落ち着いたように見える。
更に落ち着かせるために背中をゆっくりさすった。すると、す、と一息すって、匪口さんは話しはじめる。
「忘年会がありまして、ですね。その場で簡単なゲームがあったんだけど……罰ゲームがセーラー服、だったんだよね。まあ見ての通り負けました。で、周りが酔いまくっていたのでもっと恥ずかしいことをさせようと…………」
曰く、彼女のところへ放り出すのが一番恥ずかしいんじゃないかとの提案で、ここへ来るに至ったとのこと。
「………………実際とても恥ずかしいです……」
匪口さんの震える声で、状況説明は幕を閉じた。

匪口さんも災難だ。
しかし、よくよく匪口さんの女装を眺めていると、これがどうして悪くない。元々華奢な体型だ。顔だって良い。骨格こそ男だけれど、ちょっと似合わないことこそ醍醐味というものかもしれない。
なにより羞恥の為に真っ赤になった顔&涙目……というのは、なかなか。
うーん、なんだか、これは。
「いや、でも、……あの。可愛いですよ」
「へ?」
「なんかそのへんの女子高生より可愛いっていうか、体格的に男だっていうのは分かるんだけどそれも味っていうか」
「え?え?桂木……ちょっと。え!?」
「涙目なとこがまたそそるんですよね」
「そそる!?何待って。何言ってるの桂木!?」
うろたえる匪口さん。
焦ってスカートをぎゅっと握る姿がこれまた可愛く見えてしまう。
私の中の衝動がフツフツと大きくなる。
「……ねぇ匪口さん、襲っていい?」
「ハッ!??」
「ていうかもう、襲います。ね?」
だって、可愛いんだもの。
我慢がきかなくなった私は、混乱する匪口さんの肩をトンッと軽く押して倒した上に、乗っかってみた。
「!!??」
困った顔で硬直する姿は、なかなか珍しくて余計にイタズラしたくなってしまう。
「押し倒しちゃった」
「えっ、えっ、桂木、いつもと違わない……?そんなキャラじゃ……」
戸惑う匪口さんを見て、ゾクゾクした。自分の中で眠っていた何かが引きずり起こされたような気がする。
衝動的に「そんな格好してる匪口さんが悪いんだよ?」と耳元で囁くと、匪口さんは眉を八の字にして真っ赤な顔でうつ向いたので、それって煽ってるだけな気がしたのだけれど。
まぁそんなことは言わずに、押し倒した匪口さんの唇にキスをするのでした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ