ワンピース

□新しい仲間
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黒髪の女。
新しく仲間に入った、あやしい女。

ニコ・ロビン。


「何してるの?」
楽しげに小さく笑う声が聞こえた。半目をあけて見れば――
「見りゃわかんだろうが、昼寝だ」
ロビンが上から俺を覗き込んでいるのが見えた。
「もう夕方よ?」
調子をかえずに空を指差す。なるほど、確かに太陽は海へと沈みかけ、一帯が赤く染まっている景色が見えた。
睡眠を妨害された俺は、チッと舌打ちして立ち上がった。

「・・・なんだ?」
ロビンがこちらを向いている。先ほどから、微塵も目線をそらさず。
「ん、アナタはまだ私の事、認めてくれて無いのかしら?」
何が楽しいのか、変わらず笑顔で。
「あぁ。・・・だが、船長の言った事だ、今更降りろなんてのは言わねえ」
「ありがとう」
風に、なびく、黒い髪。
バカかちくしょう。綺麗だなんて思ってしまった。

「こんな私を、」
びくんっ、と体がはねた。しばらく無言で微笑んでいたロビンが、急に口をひらいたものだから、綺麗だなんて思って見つめてしまっていた俺は過剰なぐらい驚いた。そんな自分が少し恥ずかしく、顔が知らずに赤くなる。
しかしロビンは気づいてないフリなのか、気にしていないのか、言葉を続けた。
「こんな私を船においてくれるのだから、あのひと達は本当にお人好し」
微笑みが、優しいものになっていく、・・・ロビンを見つめながらそんな事を思った。
「あぁ、確かにあいつらはお人好し過ぎる」
ふん、と鼻をならせば。

「でもね、剣士さん。あなたも十分な程お人好しだわ・・・」
ついにクスクスと声を出して笑うロビンに、俺は「あぁ?何でだよ」と反論する。
「だって、私を追い出すような事はしないのに、警戒はしていて、そしてソレは仲間の為でしょう」
「なっ・・・」
何でそういう考えになるんだ。赤い顔が、更に赤くなっていくのが、自分でも分かるよう。
「皆を思いやってる、だからこそ私をまだ認めていない。・・・優しいのね、剣士さん」
穏やかに紡ぎ出された言葉が、何故か俺を動けなくして。そこにいる、不思議で、綺麗な女に縛りつけた。

思えば。
このときにはもう、この女に惹かれていたのかも知れない――。
それはあとになって、考えてみることだったけど。

何度目かの強い風が、ロビンの髪を再びなびかせて、俺はそれを見つめた。

「いつか、認めてくれるかしら?」
口を開いたのはロビン。
「さぁな、・・・お前の行動次第じゃねえか?」
その時俺が笑っていた事に気づいたのは、そうね、と小さくつぶやいてロビンが去った後。

大きく、ため息をついた。
とんでもない奴が、仲間になったものだ。
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